不動産管理会社へ支払う管理委託料は経費に算入されるか?

 不動産賃貸業を営む方が、ご自身や親族などを代表者とする法人(いわゆる‘不動産管理会社’)に管理料を支払う場合、それを不動産所得の経費として算入できるかどうかということは、しばしば議論になるところです。「不動産を管理しているという実態が伴っているのか?」「他の管理業者にも管理委託を委託している場合、重複して委託することは必要か?」「支払う管理委託料は適正金額か?」など、いくつかのポイントが指摘されます。

 さて、国税不服審判所は平成2534日の裁決で、不動産賃貸業を営む事業主が代表を務める法人(以下、A社)に支払った管理委託料を不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべきであるとの判断をしています。この事例の概要をご紹介します。

 

1.事実関係

請求人は、建物と駐車場を賃貸し、自らが代表を務め、配偶者や子供が役員に就い ているA社に管理委託料を支払っていた。また、この法人とは別の管理業者(B社)にも管理委託料を支払っていた。

2.税務署の主張

税務署は、二社への管理委託料支払いは重複委託であり、A社への支払いは経費に算入できないと主張した。

3.請求人の主張

 B社に管理を委託するだけでは本物件の管理を賄えなかったため補完するためにA社を設立した。A社は代表の請求人や配偶者がごみ収集の立会い、廃棄物の保管・処理などの管理業務を行い、実費相当額を請求人個人が負担し、経費に算入していた。このことは配偶者が作成したA社の業務日誌の記載内容からも明らか。

4.審判所の判断

 A社は請求人から本物件の管理業務の委託を受けて、消防・防災設備の点検業務、給湯設備の修理及び取替工事の発注他の管理業務を行っていることなどが認められる。従って、請求人がA社に支払った管理委託料は、不動産所得の経費に算入することは妥当である。