国外の中古不動産による節税策

 会計検査院は平成27年度決算検査報告の中で、富裕層の一部に国外不動産を利用した節税策の実態を明らかにした上で、財務省に対しこの問題に関連して減価償却のありかたを検討するよう求めています。税制改正につながる可能性も大きそうです。では、どこに問題があるのでしょうか?

 中古資産を取得した場合、その減価償却費の計算に当たっては新築からの経過年数に応じて耐用年数を短縮することができます。従って、かなり短い期間で減価償却費を計上できることになります。これは国外資産であっても同様です。

 この国外資産を貸し付け、家賃収入よりも大きい減価償却費を含む経費を計上して所得をマイナスとし、これ以外の所得と相殺するというスキームです。そして減価償却が終わると売却します。

 それなら国内不動産でも同じ手が使えそうですが、国外不動産とする理由は国外においては中古資産の市場価格がさほど低下しないという背景があります。減価償却後の簿価は低くなるので譲渡所得が多額になるというのはその通りですが、不動産の譲渡所得は定率で課されるので累進課税で課される総合課税の最高税率と比較するとかなりの節税効果があります。

 検査院はこの節税策の利用実態を高額所得者が特に多い10税務署における申告状況から調査して判明したとのことです。検査院の指摘は税制改正に結びつくことも多く、今回のケースも対策がとられる可能性があります。