40代ビジネスマン「難問突破」の研究

40代は人生の折り返し点。私もその一員です。仕事も充実し、家族に対する責任も増し、まさしく
「働き盛り」の年代ではありますが、漠然と将来への不安を感じるのもこの年代でしょう。 業績、決断、部下育成・・・40代ビジネスマンに責任は重くのしかかります。しかし、

「多忙感は増すばかり」
「体調に昔ほどの自信がない」
「家では家族と会話がない」
「我が子の将来も気にかかる」

などの、難問山積。でも、ここでつまずいたり、転んだりするわけにはいけません。今回は、各界のリーダーが教示する’身に降りかかる難問に負けない方法’をご紹介します。


処遇への不満 ― 意に沿わぬ畑違いの配転。本流から外された

  • 「お天道様は必ず見ている。」しっかりやっていれば必ず認められると信じること
  • 課題に直面したとき、「自分ならこうする」という頭のトレ-ニングを欠かさない
  • 先例にならい、学ぶこと

 (クボタ社長 幡掛大輔)


脱落・能力不足 ― 専門知識で若手に負けた。MBA的知識がない。

  • 40代が不安感に襲われる側面は2つの要素がある。どの時代にも共通なのは体力低下、親の介護、子供の教育。今の40代特有の要因は、MBA的知識の不足。「ストラジ-」「ファイナンス」「マ-ケティング」の3つの分野にコンプレックスを持つ
  • 1つ下の世代にMBA取得者があふれている現在、今更これを勉強しても価値は低い。
  • 今の40代は系統だった勉強こそしなかったものの、興味あるものを広く濫読、勉強しているのが強み。これと豊かな経験を「収束」させて「マイオピニオン」に変換すべき。
  • 40代にとって資源は有限。一番勝てる土俵で集中して使うべき。

(A.T.カ-ニ- ヴァイス・プレジデント 山本真司)


失敗への恐れ ― 新規事業が破綻した。任された事業が破綻した。

  • 失敗を恐れぬチャレンジから新しいものが生まれる。失敗の不安からチャレンジをしなくなれば、破綻を迎えるのみ。現状維持は退歩に他ならない。
  • この不確実な時代に過去の経験や努力は役に立たない。新しいことにチャレンジするしかない。その結果、再起する実力が備わる。
  • 40代なら、いくら失敗しても再起出来る年齢です。

(ヤオハンジャパン会長 → ハウインタ-ナショナル会長 和田一夫)


変化への恐れ ― 新天地への挑戦が怖い。転職する勇気がない。

  • 「40代を襲う変化への不安」が生まれるのは、「あるべき自分」と「現実の自分」を比べているから。
  • 「あるべき自分」を捨て、他と比較せず、今自分が従事している仕事・組織から、できるだけ多くのものを吸収しつくすべき。
  • そして「卒業したな」と感じたら次の仕事を探しても良い。そこまでやりぬいた自負があれば、自ずと経験も能力も身に付いているはず。
  • 悩む前に、やるべきことはたくさん発見できる。

(三菱商事 → GE → 長野県産業活性課・雇用創出推進局長 丸山康幸)


おカネの心配 ― 住宅ロ-ンを返せない。わが子の教育費が足りない。

  • 家計の悩みの多くは経済的に不合理な行動に原因があり、それに気付くことが問題解決の第一歩。「家を持って一人前」「子供は私立に」などの見栄やプライドが家計を圧迫。
  • 見栄えのよい仕事につき、持ち家に住み、子供を一流私立に通わせたい。 経済的な問題は、そんな自分で自分にはめた枠の中で起こっている。
  • 冷静に、自分にとって何が大事なのか振り返るとき、経済合理的に考えることが問題解決のヒントになる。

(作家 橘 玲)


妻との不仲 ― 話すことがない。なぜかご機嫌が悪い。

  • 子育て、嫁姑の関わり、介護の問題に夫が無関心なため、妻は1人で抱え込んでしまう。
  • 基本的に、夫が「これがあれば妻が喜ぶだろう」と思うものと、妻が望むものは大きくすれ違う。これを摺り合わせるにはるにはコミュニケ-ションが不可欠。
  • 但し夫は「コミュニケ-ションしてやる」と、上手に出る傾向が強い。 その解決のためには、ありのままを話す必要がある。
  • 散歩をしたり、カフェへ行ったりなど、一緒に体を動かすという右脳的な触れ合いで、より心は通い合う。
  • 夫がコミュニケ-ションをとろうと働きかけていけば、妻は嬉しくて自分も変わろうとし、より魅力的になる。

(医学博士 海原純子)


わが子の不出来 ― 受験に失敗した。かけてやる言葉がない。

  • 40代は自分も忙しく、子供も親離れを始めてしまい、しつけに手が回らなくなる世代。
  • 思春期の子供は問題を起こすのが当たり前。
  • 最近の親は一般に子供に甘く、しつけが行き届かない傾向にある。子供の嫌がることを一切させず、欲しいものは何でも与える。それよりも勉強が大事と考えている。
  • 一度社会に出ると、学歴などさしたる意味もないのに、そのどうでもいい学歴と引き替えに、義務と責任を教える大切な教育の機会を奪っている。
  • えらそうな説教は不要。家庭での役割を与え、日常の会話で会社の話、新聞の話を通じて社会の風を吹かせ、社会を知る親を知るきっかけにすればよい。

(町沢メンタル・ヘルス研究所所長 町沢静夫)


親の面倒 ― 誰が介護の面倒を見るのか。その費用は誰が持つのか

  • 介護の問題は、事が起こればマニュアル通りに対処することで、リスク回避できる代物ではない。当事者になった場合、自らの手で解決の糸口を探さなければならない。
  • 敵前逃亡は許されない。目の前の老親をどう介護していくか、その覚悟だけが求められている。家族で話し合え!
  • 介護を、自分の日常とかけ離れた世界の事柄と思った瞬間から、底なし沼への転落が始まるのが介護である。

(ジャ-ナリスト 中村聡樹)


体調の懸念 ― 理由なく疲れやすくなった。健康診断で変な数値が出た。

  • 40代は仕事も忙しく、家庭面でも大変な時期。食生活も不規則になり、運動や睡眠が不足しがち。ストレス発散でタバコを吸う人も多い。
  • 会社の健康診断や人間ドックの検査結果を過信しないこと。行わなかった検査結果はわからない。
  • 検査の限界を知った上で、疲れやすい、体重の急変、微熱などの体のメッセ-ジを受け止めたら、早めに専門医に相談すること。

東京医科歯科大学大学院教授 奈良信雄)


老後の心配 ― 年をとってから、何をしたらいいかわからない

  • 40代は「不惑」などではない。日々現実の生活に向かって活力を使っている時代なので、老後のことなんて映像を結ばない。
  • 「味のないヤツ」・・・例えば、本屋へ行っても経済書しか買わない。何でも明快に一刀両断に分析する。そういう人は、人間の膨らみ、深みが足りず、老後は茫然自失してしまう。
  • 40、50代は教養や多様性など、人間としての膨らみを身に付けていかないと、老後は心細い。
  • 人生の充実期だからこそ、遊び、旅行、読書などで自分に投資し、人生を深く豊かにするべき。   (キャスター 森本毅郎)

参考記事 「プレジデント2004.8.16号」