社長さんの常識は銀行さんの非常識

 銀行員さんとの付き合いの中で、『?』や『!!』の経験はありませんか。銀行員さんが必ずアポなしで来るのが私の『?』でした。事前に連絡してから来て欲しいとお願いしても、お構いなし。そんな銀行員さんの行動の謎解きをしてくれたのが、”社長さんの常識は銀行さんの非常識”(自由国民社・西口貴憲著)です。著者は、7年間の銀行勤務を経て現在はコンサルタントとして活躍中。本著では、赤裸々な銀行の裏事情を紹介しています。

 社長さんからは「決算書は、経常利益をちょっとだけ黒字にしたい」という声をよく聞きます。利益を出して銀行に対し経営の順調ぶりをアピールしたいけれど、税金は払いたくないというのがその心です。ただ、「決算書上の経常利益」という表面的な数字だけで会社の経営状況を正しく判断できるはずはありません。利益が同じでも、社長さんの給料が月額10万円の会社もあれば100万円の会社もあります。減価償却を300万円計上している会社と全く計上していない会社が同じ評価である筈もありません。
 今回は本著より、銀行では中小企業から提出された決算書にどのような修正を加えて『実質経常利益』を算出するのか、また『実質自己資本』を算出するかをご紹介します。


『実質経常利益』を出すために銀行が行う修正事項

 1.減価償却費

適正な減価償却費が計上されているかどうかがチェック対象。計上されていない場合は、適正な減価償却費を製造原価か一般管理費・販売費に計上する。

 2.有価証券売却(評価)益、売却(評価)損

会計基準では投資有価証券に係る売却益(損)等は特別利益(損失)で、通常の有価証券に係るものは営業外収益費用で処理することとなっているが、中小企業の財務審査では、殆どの場合特別利益(損失)で処理される。

 3.固定資産売却益等

上記同様、営業外収益でなく特別利益に組み替えられる。

 4.保険金に関するもの

満期保険金や損害賠償金は特別利益に組み替えられる。

 5.雑収入

雑収入として処理されているものは、殆どが特別利益に入れるべきものと扱われる。大きな雑収入を計上していると必ず明細を求められる。

その他、銀行が決算書で修正を加える科目は、その他いろいろと考えられるが、営業外収益に計上されているものは受取利息・配当金・不動産賃貸収入など継続的に発生するもの以外については、特別利益に組み替えがされる可能性が強い。 

『実質自己資本』を出すために銀行が行う修正事項

 1.在庫

実際の在庫と簿価の数字が一致していれば問題ないが、過大に計上されている場合は含み損と認識される。

 2.不良債権

ずっと眠っている売掛金や期日の過ぎた受取手形があれば、正当な理由がない限 り不良債権として認識される。

 3.ゴルフ会員権、株式

多くのゴルフ会員権の時価は購入時より下落している。ゴルフ会員権も株式も時価が下落しているものは含み損を認識される。

 4.仮払金

回収の可能性があるのかがポイント。つぶれてしまっている会社やわけのわからない先への貸付金や仮払金は不良債権として認識される。

 5.有形固定資産

適切な償却が行われていないと、含み損になる。内容の思わしくない会社に限って償却を止めて無理やり黒字にしている。そんな小手先のことで銀行はごまかせない。

 6.土地

土地の明細から時価をはじき出す。時価が簿価より高ければ含み益、低ければ含み損を認識する。   土地の時価を求める計算式は

  (1)公示地価もしくは基準地価×面積
  (2)相続税路線価÷0.8×面積
  (3)固定資産税路線価÷0.7×面積

 尚、それぞれの価格はhttp://www.chikamap.jp/(財団法人資産評価システムセンタ ー)で。

 7.投資

保証金、保険積立金など。どんな内容なのかでなく、簿価通りの現金が返ってくる かどうかが銀行の関心事。返ってこないのなら含み損と認識される。

 8.繰延資産

 銀行は、費用の繰り延べをほとんどの場合認めない。ほぼ全額が「含み損」と扱われる。