稲盛和夫「アメーバ経営」の衝撃

  京セラ名誉会長であり、中小・ベンチャー企業の経営者のための経営塾『盛和塾』塾長の稲盛和夫氏が提唱するのは「アメーバ経営」。技術開発、技術改良、製造に営業と何もかも自分で手がける中で”孫悟空のように、自分と同じ気持ちになって、責任を分担してくれる分身が欲しいと思った”のがその発端だそうです。

 今回は、『日経ベンチャー2007.7 日経BP社発行』より、この「アメーバ」を導入して変革を遂げた企業の事例をご紹介します。


ケース1.築地すし好(東京都中央区/すし店)

  ~ すし職人もコストを意識 6年間で利益8倍に

  • 都内を中心に26店のすし店を展開。一店舗ずつ一つのアメーバになっていて、店ごとに売上高、客数、客単価、売上原価、人件費を毎日計算
  • アメーバリーダーの店長は、月の予算を元に翌日の売り上げ目標を決め、利益が出る範囲内に、ネタの仕入れ総額を抑える
  • アメーバ経営導入と同時にそれまで秘密にしていた仕入れ価格や家賃を社員に公開し、各アメーバが自分たちで経営数字を計算できるよう改めた。

ケース2.サンフロンティア不動産(東京都千代田区/不動産のリプランニング等)

  ~ 稲盛流経営を愚直に実践。社長の情熱に答えて社員も必死に働く

  • 構成員が一人の「一人アメーバ」を社長と社員の人数分作り、それぞれ営業実績や、使った経費を毎日書き出した。社員は、数字をガラス張りにすることで会社の状況を理解し、必死で働くようになった。
  • 一体感は営業職のみならず事務職の社員も同様に持っていて、経費の削減を常に意識する。

ケース3.ヒューテック(高松市/シート材の生産ラインに組み込む検査装置の製造)

  ~ 経費削減の重要さに気づく 利益率が急上昇し、無借金経営

  • 以前の「売上至上主義」から抜け出せず、経費を積極的に使っていた。借金が増える状況で危機感をつのらせ、「時間当たり採算を一番に考える」と決意。社員にも説明。経費削減で今では無借金に。

ケース4.ヒラノ商事(千葉県木更津市/自動販売機のオペレーター業)

  ~ ずさんな管理体制にようやく気がつく 社員が数字を意識し自主的に経費削減

  • 以前は社内管理がずさんだったが、アメーバ経営を導入。各アメーバが計上する数値に正確さが求められるが、そのために行った伝票チェックで1800万円もの未収金が発覚。在庫確認も大ざっぱだったが、一つ一つの作業を正確にこなすことを心がけた。
  • 各営業所を独立したアメーバと位置づけ、相互を競い合わせることで経費削減に取り組むようになった。