ファミリー企業が陥る三つの落とし穴

パロマや不二家の例を挙げるまでもなく、ファミリー企業はその特性ゆえの強さと弱さが常に背中合わせとなっています。うまく機能すれば抜群のパワーを発揮するものの、ひとたび悪い方向に走り出すと一気に弱体化するという脆さをはらんでいると言えます。今回は、『日経ベンチャー 2007年4月号(日経BP社発行)』の特集”実証!ファミリー企業は高利益率 日米欧のファミリー企業を徹底分析”から、「ファミリー企業が陥る三つの落とし穴 家族の暴走が会社を壊す」をご紹介します。


*Ⅰ*「同族危険度」が分かるオリジナルチェックシート

  当てはまるものにチェックを入れてみて下さい。質問横に(1)とあるのは”会社を私物化する要因”、(2)は”身内への甘さからくる行為”、(3)は”親族の紛争が起きるおそれあり”と診断されます。

創業者の理念や言行に付いて、従業員にはあまり話し聞かせていない (1)
ファミリーを役員に引き上げるとき、従業員に理由を説明しなかった (1)
役員の給与や賞与の金額は、従業員にオープンにしていない (1)
身銭を切ってつくったのだから、会社はファミリーのものだと思う (1)
個性的な新入社員が入ってきても、半年もたつと大人しくなってしまう (1)
日常業務をなぜそう進めるのか、従業員がきちんと理由を説明できない (1)
創業者の墓参りや子供の誕生会などファミリーの行事に従業員を強制的に参加させている (1)
創業者の名前を従業員が覚えていない (1)
「最近、羽振りが良すぎないか」と友人にたしなめられた (1)
会社が取引先や銀行に信用があるのは、正直自分のおかげだと思う (1)
従業員の総意より、ファミリーの意向を優先している (1)
ファミリーの後継者の能力が足りなくても、社長にしてしまうかも知れない (2)
後継者候補の能力について、第三者に意見を求めたことはない (2)
ファミリーに対して、堂々と苦言を呈してくれる役員は1人もいない (2)
従業員の前で、ファミリーの陰口をたたいたことがある (3)
何もかもさらけ出して相談できる相手が1人もいない (3)
「兄派」「弟派」など社内でファミリーの派閥がある (3)
おい、めいやいとこなど大勢のファミリーが経営に参画している (3)
経営者と後継者が保有する自社株を合わせても過半数に達しない (3)
息子が新規事業をやりたがっても、若いうちはさせない (3)

 


*2* ファミリー企業が陥りやすい落とし穴の三大要素は「会社の私物化」「身内への甘さ」「親族の紛争」と言われる。それらが原因となって落とし穴に落ちた企業の実例を紹介

【落とし穴1 会社を私物化】

※ 告白
    不二家元役員が明かす「藤井家の内幕」
    一族の論理で役員人事、人心離れる
  • 藤井家による会社の私物化により、従業員の士気は落ちるところまで落ちていた
  • 能力主義を掲げ、藤井家以外の優秀な人材を役員に迎えた改革派を、一族の利益に反すると排除する
  • 一族の争いの果て、優秀な社員が大量に退職してしまう
※ 解説
    愛情と私物化の線引きを明確に
  • 愛情と私物化は紙一重。不二家のケースでは、一族の利害だけを考えた行動や世間一般のルールから大きく逸脱した行為(例えば、隠居した人物が権勢を振るなど)が従業員の士気を大きく下げた。
  • 会社経営のなかで、他人の力を借りてきたことを忘れ、従業員に対する感謝の気持ちを忘れたとき、不二家と同じ道を歩む。

【落とし穴2 身内への甘さ】

※ 告白
    和田一夫・元ヤオハングループ代表情に流され、
    弟の社長交代遅れる
  • 弟に社長の座を譲ったものの、過剰投資で大胆な事業再構築が必要となった。そのために社長に復帰しようとしたものの、娘の結婚式は社長の座で臨みたいと言う弟  の懇願で白紙撤回
  • 情に流されたこの選択が原因で粉飾決算を経て倒産 ・経営者として適格でないと弟を評価できなかったのは、身内を客観的に見ることが出来なかったから。
※ 解説
    身内には正しい判断をしにくい
  • 和田氏は、身内に甘く接したのではなく、身内に対して正しい評価が出来なかった。  特に平穏無事な時ほど判断力が鈍る。
  • 自分の判断が正しいと思っても、外部の意見を聞くべきである。

【落とし穴3 親族の紛争】

※ 告白
    ある中小専門商社の悲劇
    親族とのあつれきに疲れ、清算
  • 唯一の成功者に親戚中が甘え、会社経営に親族の公私混同の感情を持ち込む。
  • 「会社のため」と思っていたが、それは親族とのしがらみの中で本心を見失っていただけで、本当に望んでいたのは自分と妻子のために生きることと気づいて会社を清算
※ 解説
    ボスの権力が弱ったときに
    争いは起こる
  • ファミリー企業はサル山に似ている。リーダーシップのあるボスが君臨しているときは一致団結するが、ボスの権力が弱まると途端に”無法地帯化”する。
  • 対策としては、ある程度権力を集中させ、『王位継承順位』を明確にして強いボスを育成しておくこと。それが不可能なら、思い切って清算してしまうのも一つの手段