「待たせない」とここまで強い

 何かについて調べたいとき、先ずはPCに向かい、サーチエンジンで検索して、表示されたサイトに順番にアクセスする・・・そんな手順から始める人が大多数だと思います。 では、どこかのサイトにアクセスしようとしてもなかなか繋がらないとき、あなたならどのように対処しますか?
 私の場合、イライラして元の画面に戻り、次のサイトにアクセスしてしまいます。現代のように凄まじいスピードで社会が変化すると、そこで暮らす私達もそのスピードで生きざるを得ない。そして、『絶対的』な時間の進み方は変っていないはずなのに、『相対的』に時間はスピードを上げて、私達の’待つこと’に対する耐性がどんどん落ちているような気がします。

今回は、日経ベンチャー 2006年6月号(日経BP社)から、『「待たせない」とここまで強い』をご紹介します。 *多くの分野で価格競争が繰り広げられている中、それとは無縁でありながら競争優位性を築き、市場を制している企業があります。価格以外の何か・・・その典型例がスピードです。「顧客を待たせない」それは常識でありながら徹底は難しい。人と時間と資金と知恵を十分につぎ込んで客を待たせないサービスを追及する企業の具体例を紹介します。


1.あさひ

本社 :大阪市都島区
売上高 :105億7000万円(2005年2月期)
設立 :1975年5月
事業内容 :自転車小売業

 ▽時間短縮の実績は?

修理に3日~1週間 ⇒ 5分~当日中

 ▼point?

社員を〝機能工〟に

 ▽背景?

自転車の大量陳列・大量販売が主流になり、零細の販売店は廃業や業務転換の必要に迫られた。その結果、「どこでも買えるが、修理出来るところが少ない。しかも時間がかかる」という事態に。 そこで社員全員に修理のスキルを身に付けさせることにしたが、この人材育成こそが他社との最大の違いであり、強みとなった。

2 岩手銀行

本社 :岩手県盛岡市
経常収益 :441億円(2005年3月期、東証1部)
設立 :1932年
事業内容 :銀行業務

 ▽時間短縮の実績は?

待ち時間12分29秒 ⇒ 6分9秒

 ▼point?

立ったままだから速い窓口、バックが一丸に

 ▽背景?

窓口スタッフは従来、接客の際に立ったり座ったりを頻繁に繰り返していたのでそのたびに時間のロスが出ていた。それを立ったまま作業することに変更することで作業時間が短縮された。 また、バックヤードのスタッフは従来、業務分野ごとに担当者が個別のデスクで業務をこなしていたため、スタッフ間の連携が不十分だった。 そこで業務分野を共通化し、同時に共通デスクに向かって立って作業するかたちに変更した。その結果「お互いの仕事の進捗が見え、手の空いたスタッフがすぐ次の作業に移れる

3.キュービーネット

本社 :東京都中央区
売上高 :38億円(2005年6月期)
設立 :1995年
事業内容 :理髪店チェーン

 ▽時間短縮の実績は?

散髪時間40分 ⇒ 10分

 ▼point?

「何をするか」でなく「何をしないか」が決め手

 ▽背景?

顧客へのサービス内容を検討する場合、「では、これからさらに何を付け加えようか」という視点ばかりから考えることが多い。理髪業界も  同様で、ヒゲそり、マッサージなど髪切り以外のサービスを付加ケースが殆どだった。 キュービーネットは「何が本当に必要なサービスなのか」を徹底的に見極め、仕事の領域を絞り込んだ結果「安くて、しかも早い」ビジネスモデルを実現出来た。

4 ネットランドジャパン

本社 :東京都渋谷区
売上高 :3億7700万円(2005年3月期)
設立 :2003年5月
事業内容 :コンタクトレンズの通信販売

 ▽時間短縮の実績は?

コンタクト到着まで2日以内 ⇒ 5時間以内

 ▼point?

少数でも速さを求める客を大切にする。それが企業のイメージを高める

 ▽背景?

注文から5時間で届くが、割高な「速配サービス」の利用はそれ程多くない。ただ、そのサービスの存在が知られることで企業のイメージが向上し、他の販売数を伸ばした。

5.神奈中ハイヤー

本社 :神奈川県厚木市
売上高 :約70億円(2005年3月期)
設立 :1972年12月
事業内容 :タクシー運送

 ▽時間短縮の実績は?

予約の通話時間3分 ⇒ 5秒

 ▼point?

目先の小判を捨て将来の巨利に付く 繰り返し社員に説いて理解を得た

 ▽背景?

以前は「電話をかけても出ない」「予約したタクシーがいつまで待っても来ない」と評判が良くなかったが、顧客をデータベース化し名前や住所を聞かなくても電話をかけただけで一番近いタクシーが駆け付ける仕組みを作った。 難関は歩合制である乗務員の協力を得ることで、会社の利益と乗務員の利益が相反する場面でトラブルも多発した。ただ、粘り強い説得の結果理解が得られ、現在では乗務員の年収は業界平均よりかなり高い。

6.三越

本社 :東京都中央区
売上高 :8420億円(2006年2月期、東証1部)
設立 :2003年(現法人、子会社合併前の旧法人は1904年)
事業内容 :百貨店

 ▽時間短縮の実績は?

接客時間13分 ⇒ 6分

 ▼point?

携帯端末などで在庫確認の手間を一掃

 ▽背景?

一部の婦人靴売り場で無線ICタグを導入しているので、客が自分で在庫確認出来る。接客時間も短縮されたが、客も在庫確認を依頼する気兼ねから解放された。無線ICタグは在庫確認に利用出来るだけでなく、問屋と欠品データの情報を共有することで迅速な欠品補充が可能となった。また、売り場店員が持つ携帯端末の利用で自社倉庫ばかりでなく、仕入先の在庫状況、取り寄せまでの日数までわかる。今後も導入店舗を増やす予定。