「頭をうまく使う」技術

 ビジネスモデルやトレンドが目まぐるしく移り変わる現代において、ビジネスマンは絶えず新しい現実に対応し、ユニークな発想を生み出すことが求められています。土台になるのは’考える力’ですが、それを伸ばすにはどうしたら良いのか?

 今回は、『THE 21 2006年3月号』(PHP研究所)から、日々新たな付加価値を生み出すビジネス・エキスパートの語録から「頭の使い方」がうまくなるヒントをご紹介します。


1.江川達也 (漫画家)

 ■ 思考力… なぜ考えることが出来ないかといったら、安全に居心地のいい状態が未来永劫続くと、何の根拠もなく思い込んでいるからです。
思考停止の脳に〝喝!!〟を入れる江川語録
  • 「ほとんどの日本人は、他人より1点でも多く点数を取れば、それだけ幸せになれるというバカげたことを本気で信じ込んでいるのである」
  • 「無能な教師たちが『ゆとり』を『怠けること』と勘違いしたものだから、効果が挙がらないばかりか、基礎学力の低下まで招いてしまった」
  • 「社会というのは、これまで自分がみたことのない問題にばかり出くわすところだ。自分の頭で考えられない人間が増えれば、その国は滅びてしまう」
  • 「マニュアル人間の弱点は、目的達成のために最小限のことしか考えないことだ。つまり、思考に余力がないのである」
  • 「この国は、自分の立ち位置も、進むべき方向もわからず、金儲けをはじめとした目先の欲望にだけ敏感に反応する人間ばかりになってしまった」
  • 「近代日本の発展の基礎にあったのは、他国に負けない科学技術である。科学技術とは、論理的に考えて、無から有を生み出してきた数学的才能である」
  • 「”稼ぐが勝ち”のような単一の”覇道の論理”だけが支配する社会であるかぎり、持つ者と持たざる者との悲惨な争いは続くだろう」

2.藤巻幸夫
  (株式会社セブン&アイ生活デザイン研究所代表取締役社長)

 ■ 分析力… 人の行動力や心理をよく観察することが重要になるのです。 そして、人が何に希望をもち、何を楽しみに生きているかを徹底的に考え抜くんです。
ビジネス脳を育てる”藤巻流”行動哲学
  • 「憧れる」 憧れは、知恵を生み出す源泉である
  • 「打ち込む」 会社や世間から与えられたルールや物差しだけにとらわれない姿勢が、思考力を高め、自分をグンと成長させる源となる。
  • 「教わる」 どんな会社でも長所が必ずあり、そこから学べることは多い。 それに気づかない人は、仕事の上達は期待できない。
  • 「感じる」 生きた情報を浴びるように自分の身体に取り込むことが、斬新なアイデアを生み、ユニークな発想を生む源泉になる。世の中から学ぶという姿勢を忘れてはいけない。
  • 「出会う」 あの人と出会いたい、学びたいという人物がいるなら、躊躇することなく、胸に飛び込むことである。素晴らしい人との出会いには、書物の何十倍もの価値がある。
  • 「つながる」 生身の人間と接する機会を増やすことで、感性を研ぎ澄まし、顧客の心を捉えるアナログ思想こそ、最強のビジネス・スキルである。

3.吉田たかよし (医学博士 / 医師)

 ■ 集中力… 多くの人が誤解しがちなのは、集中して物事に取り組む「ON」の時間を増やそうとすることです。 私からみれば、多くのビジネスパーソンに足りないのは、むしろ「OFF」の時間です。
“吉田流”OFFのスイッチ法
  1. 自分の睡眠サイクルを把握して、睡眠をしっかりとる
  2.  楽しかった思い出を、意識して呼び覚ます
  3.  机にしがみつかず、ときには社内を歩く
  4.  電車に乗ったら窓を向き、景色に目を留める
  5.  デスクワークが続けば、必ず人と会話を交わす
“吉田流”ONのスイッチ法
  1. 「よし、やるぞ」と腕に力を入れ、ガッツポーズする
  2.  全身に思いっきり力を入れ、20秒ほど伸びをする
  3.  夜中に発想を拡げて、午前中に集中してまとめる

4.秋池玲子  (株式会社産業再生機構マネージングディレクター)

 ■ 先見力… 仕事の幅を広げようと思えば、どこまでも 無限に広げられますが、とくに時間が限られている場合、その見極めが大切になってきますね。
「仕事を考える」五つの視点
  1. 最初の段階で、考える方向性と範囲を見極めよう
  2.  課題を分解するときは、斬り口をじっくり考えよう
  3.  課題を複眼的に眺めて、問題の本質に迫っていこう
  4.  仮説と検証のサイクルのスピードを上げていこう
  5.  ベテランになるほど、ゼロベースで考える習慣を大切に

5.樋口裕一 (白藍塾塾長)

 ■ 説得力… 日本の文化が失われてしまうと嘆く旧世代の方も多いようですが、国際化したビジネス界では、論理思考なくしてはもはや生き残っていけません。
常日頃から論理的な話し方を心がけよう
  • 主張表明 ~「私は(YES or NO)と考えます」
             ↓
  • 意見表示 ~「たしかに~です。しかし、~です」
             ↓
  • 根拠 ~ 「なぜなら~です」
             ↓
  • 結論 ~ 「このようなわけで~です」

人の行動力や心理をよく観察することが重要になるのです。 そして、人が何に希望をもち、何を楽しみに生きているかを徹底的に考え抜くんです。