馴れ合い組織を解体せよ

 アート経済情報サイト「アートタクティクス」の信用度評価で世界5位という高い評価を受けるアーティスト村上隆氏は、「ほめて伸ばす」日本式、教科書的組織論を重視していたのでは世界から取り残されてしまうと指摘しています。『週刊ダイヤモンド』から、氏による「2013年に日本は、個人は、どう動くべきか」をご紹介します。


 東日本大震災後、自社の教育スタイルを「完全垂直指令型」に改めた。いわば、「オレの言うことを聞け」という教育スタイル。「ほめて伸ばす」一辺倒の教育方法では結局、ぼんやりとした人間しか生まれなかった。戦後日本の借り物の民主主義の中では皆が平等というお約束の下で競争を排除した結果独立心を持たず、馴れ合いの社会をよしとしてきた結果だ。

 混乱ばかりもたらす自由を与えていても仕方がない。戦略的にターゲットに向かって弾を撃つやりかたをしなければ勝てない。その手段は二つ。

1.基礎体力のトレーニング

 各界で活躍する若い人の中に「運動神経がいいだけ」の人は多いけれど、基礎体力がないので継続力や集中力が劣化している。何かを目指すのに、逃げ場を用意している。世の中に多数存在する「理不尽なこと」に遭遇することは「おかしいこと」という考え方を正論とする。
 不平等な環境の下にいる人にも「夢はいつか叶う」との妄想を与え日本人を怠惰にした。その方便をすて実直に訓練を続けることこそクリエイティブであるとの基本に帰るべき。

2.ご機嫌取り

 相手の感情を顧みず自分の欲望に忠実過ぎる人が増えている。人のご機嫌も取れない人は社会で生きていくための最低限の適性すらないことになる。   相手の求めることを追求して提示することを「迎合」と批判する向きもあるが、信念を曲げているのではない。
 自分にとっての成功は、北斎の「富獄三十六景」のうち唯一世界で知られる1枚に続く1枚を作ることでしかない。現代の日本社会における評価を求めることは目標ではない。