論理力トレーニング

 ビジネスマンにとって重要なのが『論理力』です。自ら考えて行動するための『論理力』が身に付いていないと、この厳しい時代を生き抜いていけない…。そこで、今回は、‘プロビジネスマンの「論理力強化法」’(PHP研究所 THE21 2012.10号より)から、一流のビジネスマンが教示する‘論理的であるためのポイント’をご紹介します。


1. 桑原 祐(マッキンゼー・アンド・カンパニー日本法人パートナー)

 ① 一歩引いて考える

 いま問題と思っていることは、本当に本質的な問題なのか。別のところに、 本当の問題があるのではないか。そう考えてみることがロジカルシンキングの訓練になる。

 ② ディフェンシブにならない

 自分の意見に対する反論があったとき、自分の意見に固執してはいけない。相手の意見をよく聞いて、自分の考えの材料にしていくくらいの姿勢が大切だ。

 ③ 手書きを活用する

 いきなりパソコンに向かって、PowerPointやWordで考えをまとめようとしてはいけない。考えがPowerPointやWordのスキルに制約されてしまうからだ。自由にマルで囲んだり矢印を描いたりできる手書きで考えをまとめてから、パソコンに向かおう。

2. 藤井清孝(ベター・プレイスジャパン社長)

 ① 立場を明確にすること

 対立概念がなく、反対する人がいないことをいうのは、当たり前のことを言っているだけ。自分の立場を明確にし、反対の人が現れるからこそ、その発言に意味がある。論理的な人とは、その反対する人を説得し、納得させることができる人のこと。さらに、相手の行動にまで影響を与えられなければ、ビジネスにおいて意味がない。

 ② 前提条件を疑うこと

 論理的に考えた結果だからといって、正しいとは限らない。その論理の前提条件を疑ってみることも大切だ。論理の前提になっていることが間違っていれば、いくら論理が正しくても、間違った結論が出てしまう。

 ③ 相手の論理を理解すること

 「自分の論理が正しいはずなのに、相手が理解してくれない」と思ったときは、相手がどういう論理で考え、行動しているのかを理解することが重要。自分で気づいていない前提条件や判断材用をもとに相手の論理ができているのかもしれない。相手の論理がわかれば、相手に納得してもらえる論理をつくることもできる。

3. 澤田秀雄(H.I.S会長)

 ① つねに数字をみること

 数字は嘘をつかない。どこに集中すべきか、どこが業績を伸ばすうえでのネックになっているのかなど、すべては数字に表われる。とくに、将来の業績の先行指標になる数字については、それをもとめにとるべき施策を考えることになるので、きわめて重要。

 ② 原則に立ち返ること

 ハウステンボスが抱えていた本質的な問題は、テーマパーク運営の原則に立ち返ることで発見できた。9・11後の混乱のなかでも、需給バランスで価格が決まるという原則から、とるべき施策がみえた。冷静に、原則に立ち返ることで、論理的な結論がみえてくる。

 ③ 現場に立って感性を磨くこと

 経験を積めば、論理が血肉化されて感性が磨かれるが、そのためには現場に立つことが必須。また、感性で判断したことが正しかったかどうかを検証し、間違っていれば考え方を変えることも重要だ。

4. 廣瀬禎彦(元コロムビアミュージックエンターテイメント社長兼CEO)

 ① 習慣よりも論理的判断で行動する

 阿吽の呼吸がまかりとおる日本の社会や企業では、論理的に判断するよりも、習慣で行動することに慣れている。そのため、論理的判断よりも習慣にもとづいて行動してしまいがち。論理的に考えて納得したことは、きちんと守りましょう。

 ② 言葉の定義を明確にする

 言葉の定義を明確にせず、「相手も自分と同じように理解するだろう」という暗黙の了解を前提にした言葉遣いをしていると、論理思考は磨かれない。言葉の定義を明確にし、相手がどう受け取るかを考えて使うべき。

 ③ 目的を飛躍・断絶なくブレイクダウンする

 論理に飛躍や断絶があると、相手に理解してもらえない。廣瀬氏は「論理記号で書けること」を飛躍や断絶がないことの基準にしている。そこまではできなくても、さまざまな情報を収集して、論理を補強していくべきだろう。

5. 成毛 眞(インスパイア取締役ファウンダー)

 ① サイエンスのノンフィクションを読む

 サイエンスのノンフィクションでは「仮説→検証」のプロセスが繰り返される。何冊も読んでいくうちに、頭の中で「仮説→検証」のプロセスが何度もシミュレーションされることになる。ビジネスの現場でもこのプロセスで考えられるようになれば、論理的にビジネスができる。

 ② ビジネスマンの共通言語を学ぶ

 MBAコースで学ぶ用語は、レベルの高いビジネスマンと話をする際の共通言語。知らないと、論理以前に話が通じない。わかりやすく解説した本も多いが、それらを読んでわかった気になっているだけでは、ビジネスマンとしてのレベルアップにはならない。

 ③ 論理力の使いどころを心得る

 ビジネスにおいては、論理的であればいいというものではない。発想を飛躍させたほうがいい場面もあるし、感情に訴えたほうがいい場面もある。不必要に相手を怒らせてしまったり、不快感を与えたりするような論理力の使い方はすべきではない。