コーポレート・メッセージ調査

  「お口の恋人」と言えば、続くのは「ロッテ」ですね。「あしたのもと」と言えば「味の素」これらコーポレート・メッセージには、短い言葉ながら顧客や社員に伝えるべき企業姿勢が込められています。
 小泉純一郎首相は今回の総選挙を「郵政民営化は改革の本丸」という言葉のみで戦い抜き大勝を果たしました。自らの姿勢や行動を分かりやすく示す短い言葉は、時として何千何万の美辞麗句より力を発揮するとの証明でしょう。

 今回は、「日経ビジネス 2005.10.3号(日経BP社)」から、”コーポレート・メッセージの作り方、使い方の調査”をご紹介します。調査は日経BPコンサルティングが行い、企業が発信するメッセージが、消費者にどれくらい認知され、どのようなイメージを与えているのかを明らかにするのが目的です。


1. 先ずは、テストです。

 次のメッセージから、企業名をお答え下さい。尚、メッセージに企業名が入っているものはその部分を伏せ、○○○としています。横に示した数字は正解率、つまり認知度を示しています。

企業名想起率ランキング
順位
メッセージ
企業名
正解率(2005年調べ)
1
お口の恋人
ロッテ
91.3%
2
あしたのもと
味の素
68.7%
3
ココロも満タンに
63.1%
4
あなたと、コンビに、○○○
60.1%
5
目の付けどころが○○○でしょ?
54.0%
6
i’m lovin’ it
53.9%
7
○○○ inside(○○○、はいってる)
52.3%
8
マチのほっとステーション
51.5%
9
うまい、やすい、はやい
51.2%
10
Inspire the Next
50.6%
11
きっかけは、○○○
49.9%
12
激安の殿堂
49.0%
13
安値世界一への挑戦
47.8%
14
自然と健康を科学する
46.1%
15
Heart-Beat Motors
41.1%
16
清潔で美しくすこやかな毎日をめざして
40.7%
17
Make it possible with ○○○
40.5%
18
もっと乗りたくなる。ZOOM-ZOOM
40.4%
19
味ひとすじ ○○○
40.3%
20
ヒューマン・ヘルスケア
40.1%


正解は次の通りです。

3
コスモ石油
4
ファミリーマート
5
シャープ
6
日本マクドナルドホールディングス
7
インテル
8
ローソン
9
吉野家ディー・アンド・シー
10
日立製作所
11
フジテレビジョン
12
ドン・キホーテ
13
コジマ
14
ツムラ
15
三菱自動車工業
16
花王
17
キャノン
18
マツダ
19
永谷園
20
エーザイ

 ただ、想起率を見て分かる通り認知度は順位が下がるに従い急激に下落しています。ロッテの例はある種「例外」と捕らえた方が正しいようです。41位以下では実に10人に1人しか企業名を言い当てられないと言うのが現実です。有力企業だけで年間広告費に実に3.5兆円かけてもです。

2. 同じ言葉で認知度上昇

 インテルが「インテル、はいってる」というフレーズを日本で使い始めたのは1990年です。但し、このコーポレート・メッセージの認知度が急上昇したのは昨年12月頃からです。 以前はCMで「もしインテルが入っていたら」という安心感や性能向上を訴えていたのを、CPU(中央演算処理装置)が消費者の生活に与える変化をユーモラスに描いたものに変えてからの現象です。
 長年使用してきて消費者の目や耳になじみがあるフレーズをそのまま使い続けながら、新たにユーザーの興味を引く種をまくことで成功した例です。

3. 全社的な統一活動の実施

 イオンは昨年9月から「singing AEON」という新しいコーポレート・メッセージを導入しました。認知度は12.8%に過ぎませんが、コーポレート・メッセージの8割近くが認知度10%以下という現状を考えれば、短期間で認知度が急上昇した好例と言えます。
 イオンのコーポレート・メッセージは消費者向けのみならず従業員に向けたメッセージも込められているそうです。社内に沈滞ムードが漂い活力を失いかけていた社内に、今一度自らの仕事を顧みてほしいとの願いを込め、「バタバタと作業に追われるのでなく、お客様にショッピングを楽しんでもらうと同時に働いてる人間も思わず鼻歌が出るようなイオンにしよう」との意味があり、事実現場に活気が出てきたとの声が聞こえるそうです。

4. 言葉の力で成功

 サントリーは昨年4月会社のロゴとコーポレート・メッセージを一新し、今年から積極的に発信し始めました。そのメッセージ「水と生きる」は「環境への配慮を意識させる」というイメージ調査でいきなりトップを獲得しています。この言葉には、「水」を事業基盤としていることの社会的責任を再認識する、という思いがあります。
 また、他の企業に先駆けて70年代から早くも環境問題に取り組んだ同社が、企業が環境問題に取り込むことが当たり前のこととなった現在、社会的な役割を再定義して消費者に認知してもらう必要があったという背景もあります。
 新たなコーポレート・メッセージの策定をきっかけとして、いままで製品によってバラバラだったロゴや社内文書に用いるフォントまでも「水」をイメージさせるものに替えています。言葉を独り歩きさせるのでなく、製品、社内の雰囲気、会社としての責任感の裏打ちで消費者に届く力がメッセージに備わるとの意図があるようです。