子供をニートから脱出させるために

ニートの増加という社会現象が問題視されています。 「ニート」とは、 “Not in Education, Employment, or Training”の略。つまり、勉強せず、働かず、職業トレーニングも受けていない状態の人を指します。 定職に就かないフリーターや、いつまでも親元に寄生しているパラサイトシングルも問題視されますが、ニートは全く働きもしないという点で、フリーターやパラサイトシングル以上に批判されているようです。

では、自分の子供がこのようなニートと呼ばれる状況に陥っている場合、親はどのようなサポートを行って、この状況からの脱却を手助けすることができるでしょうか。  「ニート脱出」(和田秀樹著 2005 扶桑社)において、いくつかの方法が紹介されています。


1.親としての権利・義務を放棄しない
2.完全主義を押し付けない
3.上手に褒める
4.上手に突き放す

 これらは紹介されている処方箋のうちの一部ですが、具体的にはどういうことなのでしょうか。

 まず、一点目です。

 ニートの親は、働かない子供を養っていますが、それだけではただの甘やかしです。腫れ物に触るように干渉しまいとするのでは事態の解決には結びつきません。
 働かない理由を尋ねたり、問題を指摘したりするのはパラサイトさせている親の当然の 権利であり、かつ義務でもあります。こうして、子供と正面から向き合う姿勢を持つことがニート解決のための出発点です。

 次に二点目です。

 親は子供に期待しがちなものですが、子供はその期待を裏切る結果となった場合に見放されることを恐れています。就職の場面においても同様で、失敗を恐れてはじめから挑戦しなくなり、その結果、ニートとなってしまいます。
 これを避けるには、完全主義ではなく、現実的な考えを持っていることを意識的に伝える必要があります。例えば、いわゆる一流企業ではなく、中小企業への就職を勧めてみるなどです。これにより、子供はプレッシャーから解放され、ニート脱出のきっかけを掴むことができるかもしれません。

 続いて三点目です。

 褒められた経験が少ない子供は、自分自身に自信を持てずにいます。そのため、就職のような自分が試される場面から逃げがちとなります。このような場合に、ただ叱り付けるだけではさらに自信を失わせる結果となります。
 そこで、例えば、一つ面接に行っただけでも「がんばっているね」と声をかけるなど、小さなことでも褒めることが有効です。このような積み重ねが子供の自信回復につながり、ひいてはニートからの脱出に結びつきます。

 最後に四点目です。

 ニートの原因が甘えにあると考え、突き放そうとしても、かえって絶望させる可能性もあります。突き放された絶望感から身体を壊したり、ひきこもりになることがあるのです。
 全面的に突き放すのではなく、食・住の面倒は見るが生活費までは世話しないなど、生活の基盤は保障しながら現実も突きつけることで、自分の置かれている状況を認識させることができます。このことがニート脱出のきっかけとなりうるのです。

 このように、親が子供としっかり向き合って、適切なサポートをしていくことがニート脱却の手助けとなりうるのです。

 

(参考文献) 「ニート脱出―不安なままでもまずやれる事とは」和田秀樹著 2005 扶桑社