「できる」と思わせる話し方

 初対面の場合、最初の数分で第一印象が決まり、さらにそれはなかなか覆されないというデータがあるそうです。特にビジネスのシーンでは「こいつ出来るな」との好印象は後々の交渉にもプラスに働く事になるはずです。
 ただ、「樋口裕一著 たった1分でできると思わせる話し方(幻冬社)」によると、「できる人」になどちょっとやそっとではなれない。ただ、本当に「できる人」になるのは難しくても「できる人」のように「見せる」だけなら苦労はない。それにはほんのちょっとのコツをのみ込み、会話術を会得すればOKとのことです。今回は、上記著書より「できる人に見える」ようになるコツをご紹介いたします。


  先ず、「できる人」のタイプは大きく分けて三つ。「頭のいい人」(秀才型)、「底知れぬ人」(大器型)、「才気ある人」(才人型)です。どのタイプを目指すにしても、基本形は「頭のいい人」ですが、目指すタイプ別「見せる方法」をマスターしましょう。

1.「頭のいい人」に見せる法

 [1] 「頭のいい人」とは?
  • ここでいう「頭」とは、「論理力」「視野の広さ」「深い考え」で、これは先天的なものではない。「訓練」の賜である。

  •  ただ、「スキがない」タイプなので「つき合いづらい」と評され、信頼は得られても必ずしもみんなから好かれるとは限らない。

 [2] 「頭のいい人」に見せるための絶対条件
  • 人の話を聞くとき、まず批判的であることを心がけなければならず、必ず相手の意見の問題点を見つけることが出来なければならない。

  • 口を開くとき、常に心がけるべきは独創的でできるだけ誰も言っていないことを言わなければならない。

  • ただ、「あまのじゃく」と紙一重ということを心しておくべき。

 [3] 「べからず」集
  • 感情的になるな 常に「冷静」に。まれに怒って声を荒立てても、理性を失ってはならない。心のどこかで計算を。どれほど仲の良い友人、世話になった先輩でも、よくない仕事はよくないと判断する必要がある。

  • 弁解するな おどおどして、くどくどと自分の行動を弁解するのはNG。マイナスを少しでもプラスに転じる方法を考えることでくよくよから脱するように。

  • 説教、きれいごとは御法度 「もっと努力して」「もっと人の身になって」という説教じみたことは言うべきでない。「がんばります」「がんばろう」など論外。他人思いで心優しく、謙虚で明るく、品行方正で優等生。もダメ。情緒的な言葉も使うべからず。「使いにくいが、優れた人間」をめざすべき。

  • 常套句は用いるな 何かと言えば格言や有名な人の言葉を使うのはふさわしくない。陳腐な言葉を使わず、もっと自分自身の知的な言葉で迫らねばならない。

  • 人をほめすぎるな ねたみなど持ってない、物わかりのいい奴と思わせる効果があるので、一般的には人をほめるのはいいこと。但し「頭のいい人」をめざすならほめすぎは禁物。自分だったらもっとうまくできる、と心では思っているのが大事。

  • 謙遜しすぎるな 謙遜は日本人の美徳であるが、度が過ぎると、ほめすぎ同様自分を低く見せる傾向があるので避けるべき。謙遜は、しないと礼を失するとき以外はしないこと。

  • 自慢するな 自慢などしなくても「頭のいい人」は「頭がいい」と見られるもの。わざわざ吹聴する必要はない。自慢は自信のなさの証拠である。自慢するまでもなく、「頭のいい人」を演じることが最大の自慢であり、最大の信頼の証拠となる。

  • 少ないデータで判断するな 少ないデータで断言していては後になって弁解のしようがない。意見を請われて判断せざるをえないときには、「少ないデータでは何とも言えないが」と前置きしてから発言すべき。

 [4] ふだんからの練習方法
  • 新聞や雑誌の投書欄とケンカしてみる 「頭のいい人」の信条は、論理力と批判精神にある。多くの本を読んで、そうした力を身につけるべき。手軽な思考力増進法として勧めるのは新聞の投稿欄。批判的に読んで頭の訓練をするのに最適。

  • テレビの討論は立場を決めろ 人の意見を聞くごとに「うむ、それはもっともだ」「なるほど、そちらのほうが正しい」と、意見を変えていたのでは、「頭のいい人」には程遠い。初めからイエス、ノーのどちらか(出来れば訓練のため、自分と反対の立場を選ぶ方がベター)に立場を決めて、自説を展開する論理力を養う。

  • 自分を相手にケンカしろ 批判力を身に付けるには、他人の言葉に口答えするのが一番だが、それでは間違いなく嫌われるので、ビジネスパーソンとして致命的。そこで、自分を相手にケンカしてみる。見たり、聞いたりして、何かを考える自分の意見に反論してみる。自分の意見に籠らず、相手の立場で考えてみることになる。

2.[底知れぬ人」に見せる法

 [1] 「底知れぬ人」とは?
  • 大変なマイペース人間で個性派だが、ときに驚くべき能力を見せて周り  を驚かせる。それが続くうち、得体の知れない、何でも理解出来る、なにやら凄いことを考えている人と評価される。

  •  このタイプをめざすのはさほど難しくなく、どちらかというと普段「鈍い」「動作が遅い」と見下されているタイプの人にお勧め。何事にも一言口出ししないと気が済まない「おしゃべり」「目立ちたがり」の人には不向き。

 [2] 「底知れぬ人」に見せるための絶対条件
  • 包容力を持て 「底知れぬ人」に見せるからには、底知れぬ包容力で人から恐れられるべき。実際はともかく、少なくとも外見上は、殺人者の心理も大政治家の心理も理解出来るかのような理解力を持つこと。

  • 得意分野を作れ 「底知れぬ人」であるからには、ふつうの人にはできないような深い思考をしていなければならない。そこで得意分野を絞ること。不得手な分野が話題になったら堂々と「そんなことには関心がない」という顔をすればいい。

 [3] 「べからず」集
  • 感情を表に出すな 「底知れぬ人」は包容力があり、得体の知れない凄味がなければならない。それにはいちいち感情を表に出して、怒ったり、喜んだりしてはダメ。ただ、無表情のままだと不気味で敬遠されるので、笑顔を作ること。ふだんはずっと笑顔でおり、ときとしてその笑みを消して鋭いことを言う。そこに「底知れぬ人」の「底知れぬ」ところがある。

  • 必要以上に説明するな 「底知れぬ人」は必要以上の説明をせず、鋭いことを言うときには、説明なしで、本質だけをぽつりと言うべき。「底知れぬ人」のおしゃべりほど危険なものはない。必要最小限の口しかきかないから「底知れぬ人」にみられるのだから。

  • はやりものに手を出すな 「底知れぬ人」は、渋い趣味を持っていなければいけない。はやりものばかり追いかけているのは考えものである。はやりものは毛嫌いする習慣を身に付けるくらいが「底知れぬ人」のとるべき態度である。

  • 人の悪口を言うな 「底知れぬ人」の第一の特徴は包容力であるから人の悪口など言うべきでない。むしろ誰かが悪口を言っていたら、弁護に回るべきだ。できるだけ他人のことはほめるべき、しかも少ない言葉数でそっけなくほめるのが望ましい。

  • 人と群れるな 「底知れぬ人」には孤独が似合う。誘われれば拒まないが、自分からは誘おうとせず、いつの間にか会社から姿を消し、一人駅に歩いているといった、どこかしら孤独で神秘性があってこそ「底知れぬ人」でいられる。飲むときは少人数でじっくり話ができるような場所を選び、しばらく黙っていてその後鋭いことを口にして’だてに黙っていたのではない’ことを知らせる。同じ黙っているにしても、大勢の中では「底知れぬ人」を発揮出来ない。

 [4] ふだんからの練習方法
  • 犯罪心理を理解しろ 「底知れぬ人」の信条は包容力にあるので、無軌道な若者にも、犯罪者にも老人にも同様の愛情と共感を抱くべきだ。したがって、世の中のさまざまな考え方を理解するよう務めるべきで、人間の弱さや悲しさを理解してこそ「底知れぬ人」になれる。ただし、偏った思想にかぶれることは「底知れぬ人」にあるまじき行為なので、厳に慎むこと。

  • 感情を表に出さない訓練を 「底知れぬ人」は、表情を読み取られないようにしなければならない。驚いたところなど人に見られたらいっぺんに底が知れる。そこで、家に帰ったら笑顔を作る訓練を勧める。どんな場面でも、自由にそのいつもの顔ができれば、感情を表に出さないでいられる。

  • 趣味を深めろ 「底知れぬ人」は教養を身に付けるべきだが、手っ取り早く教養を身に付ける手段は、趣味を作ることである。但し、流行に流されるのではなく、愛好者は少な目だがバカにされておらず、一目置かれている、といった趣味が適当。小説や詩、俳句、短歌、平安以降の古典などの文学作品の他、歴史書や専門書に読みふけるのは、なによりも「底知れぬ人」にふさわしい。また、芸術もよい。特にクラシック音楽の鑑賞は、実践するよりも教養を感じさせる。特定の作曲家や特定の楽器、特定の時代に偏った趣味こそがふさわしい。

3.才気ある人」に見せる法

 [1] 「才気ある人」とは?
  • 才人と言い換えてもよい。何を聞いても何でも知っている。でまかせに見えて意外と正確で、政治、経済、スポーツ、芸術、料理、芸能、果ては心理学から哲学、工学、生物学、手芸まで詳しい。

  • 人の集まるところにはなくてはならない人気者的存在で、だれからも一目置かれている。軽薄なところもあるが、ときにはっとするような鋭さも見せる。

  •  「頭のいい人」や「底知れぬ人」のように扱いづらくなく、人当たりがよく、何かと便利な存在なので、上司からも目をかけられる。

 [2] 「才気ある人」に見せるための絶対条件
  • まず何よりもあくなき好奇心を! 「才気ある人」に見せるのに深い知識や思考力は要らない。分野を限定すべきでなく、逆に深さを限定すべき。何はともあれ、気持ちの若さをいつまでも失わず、目に入るものをすべておもしろいと思い、食わず嫌い、見ず嫌いは一切せず、何にでも挑戦してみる、それが「才気ある人」に見せる最大の秘訣

  • 腰は低く、顔は広く 偉そうにしていると「才気」は単なる「自慢話」になってしまい、人気者どころか、確実に嫌われ者になる。腰を低く、顔を広くして人見知りせず「才気」を示さなければならない。それには、頑固さを捨てていわばお調子者になることだ。

  • 鋭いことを言うのは十回に一回でいい 鋭いことを言おうとするとつい黙りがちになり、才気を発揮出来ない結果になりかねない。それよりとりあえず何か知識を披露しようとしたほうがよい。十回に一回くらい鋭いことが混じっていれば十分に「才気ある人」と見てもらえる。

  • 単なる「おしゃべり」になるな 「才気ある人」はひとつ間違うと、無内容なことをしゃべりまくるおしゃべりや、自分のことばかり話題にするおしゃべり、みんなに嫌われているのに近寄ってきてクドクドとしゃべるうっとうしいおしゃべりになりかねない。それを確かめるには、聞き手の反応を見て避けられているようならすぐにしゃべるのをやめて聞き役に回るべきである。

 [3] 「べからず」集
  • 暗い顔をするな 「才気ある人」は明るく明朗で楽天的でなければならない。声は低音よりやや高目で。歯切れよく、早口であるほうが「才気ある人」らしい。

  • 自慢するな 嫌われるのは自慢話。一流大学を出ている、金持ち、家柄がいい、などの自慢はもちろん、自分がどんなに評価されているか、周りからどんなに信頼を得ているかといったほのめかしもすべきでない。私的な話をするなら、やや漫画的に脚色し自分は道化になっておもしろおかしく話すべきだ。

  • 他人と距離をとれ うっとうしく思われることは、「才気ある人」の最大の敵。うっとうしく思われた途端、相手に才気を感じてもらえなくなり、単なるおしゃべりの嫌われ者、知識をひけらかすだけの嫌味な男に転落してしまう。他人からうっとうしく思われないための最大の秘訣は、他人と密着しすぎないことだ。

  • セルフ・イメージにこだわるな だれでも自分についてのイメージ、セルフ・イメージを持っている。自分で作り上げたイメージに縛られて生きているのが現状であるが、そのような思い込みをやめて、自由に行動してはどうだろう。そうすると、今まで思い込んだ自分とは別の自分が見えてくるはずだ。そうすると身も心も軽やかになり、自由に「才気」を発揮出来るに違いない。

  • そもそもの発端から話し始めるな 時間が限られている現代、一人が延々話していると「対話のできない、一人だけしゃべりたがるイヤな奴」という扱いを受ける。現代人は、発端からの話に興味を引かれて、じっくりと耳を傾ける習慣を失っているので、それを肝に,銘じておくべきだ。

  • 映画や小説のストーリーは話すな 「才気ある人」をめざすからには、小説や映画の話を避けるべきでない。それどころか、得意の持ちネタにしておくと何かと便利である。但し、出来るだけ簡潔に説明すべきである。小説や映画のストーリーの説明ほど相手にとって退屈なものはないし、感動を共有出来るわけでもなく、愚の骨頂。

 [4] ふだんからの練習方法
  • 知識は情報知識年鑑・カタログ・受験参考書から仕入れろ 「才気ある人」に見せるには、最低限の知識は必要。知識源は新聞と雑誌だが、長い時間を必要とする。そこで、もっと手早く知識を手に入れる方法として、情報知識年鑑(イミダス、知恵蔵、の類)を利用するとよい。もちろん必死に覚える必要はなく、日課として目を通し、拾い読みする程度で十分。

  • 早口でしゃべる習慣を! 「才気ある人」は低い声でぼそぼそしゃべってはいけない。歯切れよく、できるだけ早口でしゃべるべきで、そうでなければうっとうしく思われ、嫌われ者になってしまう。どうしてもつっかえてしまう人は、早口で、よどみなくしゃべれるようにしておくことが必要で、それには新聞や雑誌の一部を声に出して読む練習をするとよい。さらに、一節を暗記して口に出してみるのも有効。

  • 流行に飛びつけ 「才気ある人」をめざすなら、どんな物であれ、流行しているものには気を配っておくことが必要だ。スポーツ、芸術、学問、芸能、ファッション、ギャンブル、料理まであらゆる情報をキャッチしなければいけない。さらに、はやりのスポーツをしてみるとか、話題のレストランに食べに行ってみるなど、流行に手を出してみるのも望ましい。

  • 楽器を一つものにせよ 「才気ある人」であるからには楽器の一つもできるべきである。ギターやハーモニカでも十分だが、チェロやフルート、サックスならさらによい。楽器がすべて苦手なら、カラオケで能力を発揮するのもよい。持ち歌を一つ、二つ作っておくと「才気ある人」らしい。