阿川佐和子「聞く力」より

 相手が誰であれ、人と会話をするときは、いい具合に盛り上がり、気持ちよく別れたいと願います。 しかし、会話が途切れがちだったり、相手の言っていることがチンプンカンプンだったり、自分ばかり話してしまったり…もっと会話上手になりたい、と切に願うことも少なくありません。

 そのため、新聞の広告欄に「阿川さんがとうとう『企業秘密』を明かしてくれた!」という文句を見つけ、解決のヒントを得ようと早速購入しました。

 「阿川さん」とは、「ビートたけしのTVタックル」でお馴染みの阿川佐和子さん。他の出演者を手玉にとっている姿や、テンポよく繰り広げられる文藝春秋での連載対談からはとても考えられませんが、阿川さんは、なんと、インタビューが苦手だったというのです。また、「常識も教養も知識も漢字もことわざも、なにも知らない娘」と家族の間では定評の「物知らず」だったというから驚きです。

 そんな阿川さんが、インタビュー経験や失敗から「心を開く35のヒント」を綴っている『聞く力』(文春新書)より、聞くことを生業としていない人にも参考になるヒントをいくつかピックアウトします。


♦ 面白そうに聞く

 聞き上手というのは、鋭い質問をすることや言葉の隙を突っ込んでいくことだけではない。 「そう」「それで?」「面白いねぇ」などとほんの一言はさみ、楽しそうに、面白そうに聞いていれば、相手は「この人に語りたい」と思ってくれる。

♦ 相手の気持ちを推し測る

 会う目的が決まっていると、脱線することを恐れ、普通の会話ができなくなってしま うことがある。 しかし、人間同士、とりあえず相手の気持ちを思いやる余地は残しておかなければ、相手は心を開きにくい。

 相手が眼帯をしていたとしたら、本題に入る前にその苦しみを理解しているという気持ちを伝え、様子を図りつつ、こちらの聞きたいことをぶつける。

♦ 上っ面な受け答えをしない

 相手の話に感情移入したところで、自分は同じ経験をしていないのだから、その気持ちのすべてを理解することはできない。「わかるわかる」と上っ面な受け答えをしていたのでは、相手は醒めてしまう。

♦「オウム返し質問」活用法

 ひとつの答えをさらに噛み砕いて話してもらいたいとき、どうも話の内容が理解でき ないとき、抽象的すぎてピンとこないときに便利なのが「オウム返し」。

 例えば、「僕はものすごく怖がりなんですよ」「怖がり?」「小さい頃から~」という具合。

♦ 初対面の人への近付き方

 愛想良く近づいていけば相手が好意的になってくれるというのは間違った信仰であり、 驕りでもある。 相手のペースや段取り、心構えを無視して自分のリズムを押し付けると、 人によっては喜ぶどころか、むしろ警戒する場合がある。