目指せ!無借金経営
「毎年堅実に利益を出して、それをストックして一定額以上の資金が出来たら設備投資をして・・・」などと考えていたら、スピード感を持った経営などとても実現出来ませんが、過度の借り入れは経営自体を圧迫して最悪の事態を招く可能性すらあります。無借金でありながら会社の成長を実現することが出来ればそれに越したことはありませんが、そんな事は可能なのでしょうか?
今回は’日経ベンチャー2007年3月号(日経BP社)’から、『無借金経営』をテーマに借入金に依存しない経営の魅力と、その一歩を踏み出すために自分の会社が取るべき対策をご紹介します。
Ⅰ 自分の会社を無借金にする
・・・「簡易型バランスシート」で借金の原因を知る(税理士・近藤学)
STEP1. なぜ無借金経営がいいのか
【理由】
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- 金利と言う余分なコストを支払う必要がなくなる
- 突然金融機関からの資金の流れが止まっても、会社が傾く可能性が低くなる
- 借金は無理な成長を招く場合が少なくない
(∵新興企業が倒産する原因の80~90%は、急成長から来るひずみである)
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【無借金経営に近付くための理論】
企業の資金調達方法は「①自己資金」と「②借入金」で、その用途は「①運転資金」「②設備投資」「③現預金」となる。従って、「②借入金」を減らすには「①運転資金」「②設備投資」を圧縮する必要がある。
STEP2. 自分の会社の「運転資金」と「設備投資」を知る
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- 運転資金=在庫+売掛金-買掛金
- (自己資本+借入金)-(運転資金+設備投資)=(仮想の)現預金 自社の「運転資金」と「設備投資」を計算した上で簡易型バランスシートを作成し、自社の借入の原因がいずれにあるのか知る
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STEP3. 会社の借金の原因を知る
自社の簡易型バランスシートの「自己資金に対する借入金・運転資金・設備投資」を業界平均と比較する。その結果、”自己資本に対する借入金の比率” が業界平均に比べ高ければ、”借金過多の企業体質”と言える
【原因】
(1) |
自己資本に対する運転資金の比率が業界平均より高い=在庫や回収サイトに借金の原因がある可能性が高い |
(2) |
自己資本に対する設備投資の比率が高い=過剰設備が借入金の温床になっている恐れあり |
(3) |
共に業界平均を上回る=両方に要因ありの可能性 |
Ⅱ 無借金へのアプローチ ・・・ 実践企業のレポート
1.借金80億円からの大逆転「設備投資の圧勝」で無借金に
~ SHOEI(ヘルメット製造・東京都台東区)
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かつて借金まみれで事実上の倒産を経験した。
だが、不死鳥のように蘇り、無借金経営を達成。
設備投資を徹底して圧縮し、不要なものはすべて捨てた。
その第一歩は、ムダに慣れ切った社員の意識改革だった。
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- 同社前身の「昭栄化工」は、約130億円の負債を抱えて会社更正法の適用申請
- 破産管財人山田勝社長(三菱商事)は”業績不振の倒産でなく、借金によるビル・新工場の建設など過剰設備投資が原因。ムダな資金を圧縮すれば再建可能”と判断。”社員自身からムダを省くとの意思付け”をする方法により改革を進め、無借金化に成功
- 現在では、設備投資の際も、なるべくお金を使わず生産効率を高める方法を社員が考えるようになり、生産効率は毎年7~10%向上し続けている。
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2.弱小卸の強気の取引「現金決済」で運転資金を圧縮
~ ジェイアイエヌ(眼鏡・雑貨類の製造・販売、群馬県前橋市)
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売り上げが増えれば、それに伴い運転資金も増えていく。
ケアを怠れば借金の必要性が増し、黒字倒産の危機が忍び寄る。
小さな雑貨卸の社長は、大胆な取引条件の改革に乗り出した。
現金決済が実現したとき、無借金への道が開けた。
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- 流通業の起業で気付いたのは、”流通業は運転資金の融通が生命線”ということ。運転資金削減のため取り組んだのは、
① 売掛金回収の手段を手形でなく現金に ② 支払いを遅らせる方法として「銀行ユーザンス」の活用
- 現金回収を実現するため商品に希少性を持たせ、”現金払いでも欲しい商品”を提供
- 「銀行ユーザンス」とは、海外で商品を船積みする際などに銀行に一時的に代金立替払をしてもらい、一定期間後金利を上乗せして銀行に代金支払をする方法
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3.無借金経営を14期継続「在庫圧縮」でさらに飛躍へ
~ コーセル(スイッチング電源の製造・販売、富山県富山市)
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高い生産効率を武器に、無借金経営を10年以上続けてきた。
今も「在庫は諸悪の根元」と改善に余念がない。
近年、一定期間が経過した在庫は強制的に捨てるルールを導入。
売り上げに占める在庫の割合を半分に減らした。
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- 困ったときに、銀行が助けてくれるとは限らない。つぶれないためには必死でムダを省き、きちっと利益をためるしかなかった。無借金はその積み重ねの結果(町野社長)
- 「多品種少数生産で短納期」という商品特性から、管理を誤るとすぐに在庫が積み上がる。そのため、一定期間経った在庫は強制的に捨てるルールを採用。
- さらに廃棄する在庫が発生した原因を究明。それは「顧客の予定変更や生産計画の変更」でなく「発注段階の人為的ミス」である事が判明し、さらに全社的課題も浮き彫りになって改善に取り組んだ。
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4.利益率の高いビジネスを選び「運転資金」の負担を軽くする
~ システムインテグレータ(パッケージソフトの開発・販売、埼玉県さいたま市)
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エンジニアが一念発起し、ソフト会社を起業。
すぐ収入になる常駐派遣ビジネスはやらず、 小さなオフィスで地道に自社ソフトを作り続けた。
芽が出るまで時間はかかったが、苦労はその後報われた。
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- 創業時決意した「無借金経営」を実行するため、開発期間中の運転資金の調達が必要なものの、利益率が高いパッケージソフト開発を手がけた。
- 無借金経営は、東証マザーズ上場の際にも高く評価された。これからは、株主からの要請でもある、「人材採用や技術開発などで積極策に打って出る」攻めの経営を目指す。
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