地方の「規格外」は都会の「宝」

 近所の地下街の一角に産直所があり、野菜や鮮魚、手作り食品などを販売しています。ここの「岸本さんのトマト」の人気が高く、店頭に並ぶと直ぐに売り切れるようでこの頃はトンとお目にかかれません。品薄状態解消のためか、はたまた二匹目のドジョウを狙ってか、他の生産者のトマトも並ぶようになったのですが、人気もお味も岸本さんには及ばないようです。

 さて、『日経トップリーダー 2013.6号』に掲載されていたトマトの話です。販売用の野菜には規格があり、変形していたりサイズが不揃いだったりするものは市場に流通せず廃棄されるそうですが、農家ではそれが大量に発生する状況にあるとのことです。それに目を付けたのが青森県三戸町で農産物の販売をする‘ノースビレッジ農園(栗谷川柳子 代表)’で、規格外トマトを抱える生産者と、調理用のため形にはこだわらないが一定の品質と一定の価格のトマトを求めるレストランとのマッチングで事業として軌道に乗せています。同様に、首都圏のレストランを回って地道に築いた人脈からの要望を地元の農家に橋渡しすることで、信頼関係を築いているそうです。

 私にも近い経験があります。愛媛県の所謂「限界集落」に近い状態の地域を訪問させて頂いた際、地元の方と懇談する機会を頂きました。若者が地域外に流出するのを食い止めるためにも地域の活性化、魅力ある地域づくりに住民の方が尽力されているとのこと。私が何気なくレストランのシェフからお聞きした「手に入りにくい野菜を安定的に確保するため、うちの店で使う野菜を作ってくれる農家さんはないかな・・・」という話をさせて頂いた際、「え?そんなニーズがあるの?」と、驚かれた様子に「え?そんなに驚くこと?」とこちらがびっくり。情報がそこの場所にだけ留まり、伝達される手段が整備されていないのかも知れません。探せば、まだまだ事業として成立する新たな需要と供給が見つかるかも知れません。