競馬脱税事件

 いわゆる「競馬脱税事件」が話題になりました。競馬予想ソフトを使用して、極めて多額の馬券の自動購入と払戻金を受け取りながらその利益を一切申告していなかったという事件です。

1.  事件の経緯

平成16年に競馬用口座に100万円を入金、以降追加入金はせず、競馬予想ソフトに適宜改変を加えながら馬券を購入し(合計28億円)続けた結果、約30億円の払い戻しを受けていました。通算すると約14,000万円の利益を得ていたことになります。

2.  検察側の主張

 馬券の払戻金に係る所得は一時所得であり、その収入を得るために支出した金額として控除すべき金額は当たり馬券の購入金のみである

3.  被告人の主張

 当たり馬券の購入金のみしか控除できないとすると、税額が利益を大きく上回る。払戻金に係る所得は雑所得に分類されるべきであり、当たり馬券以外の外れ券を含む馬券の購入金額全額が控除の対象となる。

4.  大阪地裁の判決

 被告人の馬券購入行為は一般的なそれと異なり、回数・金額が多数・多額で、その態様も機械的・網羅的で過去データの詳細な分析結果に基づく、利益を得ることに特化した継続性・恒常性を獲得したものと認定。よって、所得は雑所得に分類し、はずれ馬券の購入金も必要費用と認める。

無申告であったことに関しては既に社会的制裁を受けていること、前科前歴がないことを考慮して懲役2月、執行猶予2年とする。

 今回は被告人よりの判決が出ましたが、これは特殊なケースです。原則は馬券が当たると一時所得に該当し、必要経費として控除できるのは当たり馬券の購入費用だけです。