社長の始末書

 中小企業にとって、トップの失敗がもたらす影響は大きく、一つのミスが致命傷となる可能性さえあります。それを反省し、次に生かさなければ失敗したことが無意味となってしまいます。今回は『日経TOP LEADER』(2012.11号 日経BP社)から、‘社長の始末書 ~ 失敗から何を学ぶか’をご紹介します。


[親子不和] 事業承継の準備不足で倒産の危機 … 木村工業社長 木村晃一

  • 現場一筋の後継者が事業所言う計で常務から社長に就任。承継に向けた親子のコミュニケーションが十分でなかった。意思疎通の不足はやがて黒字倒産の危機を招く。

  •  窮地において必死に財務や経営計画の作り方を学び、復活。社内で数字を勉強する仕組みを設け、数字に強い後継者を育て、十分準備した上で承継させたい。

[現場偏重] 職人への未練を捨てられなかった … 八天堂社長 森光孝雅

  • 赤字転落をきっかけに、頼りにしていた店長が次々に去って行った。業績は一気に落ち込み、倒産寸前に。先輩経営者の言葉でトップが果たすべき役割に眼覚めた。

  • パンを焼ける職人が次々と他の繁盛店に移り、社長自身がパン職人となって奔走し疲弊し切った。ただ、経営者はそれではダメ。企業として事業を伸ばすには職人との二足のわらじは履けない。

[過剰型信用] 相手に依存し過ぎてしまった … 中村醸造元社長 中村充滋

  • 情報をオープンにしていた大口取引先に裏切られた。「依存し過ぎる怖さを知った」と振り返る。偏った取引構造には会社破綻につながりかねないリスクが潜んでいる。

  • 売り上げの七割を占める卸業者に、相手のメリットにもなると考え経営に関する情報を伝えてきた。それが裏目に出て、相手にとって都合の良い条件への変更を要求された。それを受け入れず民事再生を選んだが、現在は再建。

[唯我独尊] 自信過剰で部下が大量離反 … バグジー社長 久保華図八

  • 外国仕込みの腕で人気美容師の名をほしいままにした。しかし、行き過ぎた実力主義が、社員の大量離反を招く。「他人ではなく、自分のせい」と思ったときに、初め て道が開けた。

  • 米国流の成果主義偏重により、実力のある美容師とそうでない美容師に給与面の差を大きな差をつけた結果、店の雰囲気がギスギスした。また、実力のある美容師は客を奪われることを恐れて技術を教えたがらなくなった上、店を辞めて独立していったため売り上げが激減した。そこで考えを変え、社員を大切にするにすると、店の雰囲気も経営状況も好転した。