どうする?中小企業の賃金

 今春、大手企業ではベースアップの動きが活発になっていると盛んに報道されています。消費税率がアップして、生活に影響を受ける社員のためにも大いに歓迎される対応です。では、中小企業の場合はどうでしょう?まだまだ景気回復に不透明さが残る中小企業にとって、賃金アップには慎重な姿勢を取らざるを得ない状況のようです。

 ただ、そのことにより社員が会社に対し不満や不信を抱く危険性があります。それを回避するには、『経営者が賃金に明確な考えを持ち、社員に伝えること』が重要で、それにより『社員の納得感を高め、モチベーション向上につながる』と言われています。今回は、その『納得感を高める』ための4つの視点をご紹介します。

(参考:日経TOP LEADER 20144月号)

 

 

Q1.賃上げできないとき、やる気を下げない伝え方は?

A1.根拠を示し、「皆の頑張り次第」と励ます

 ポイントは2点。1点目は、感情論でなく客観的な方法に基づいているという事実を、賃金の決め方のルールや根拠となる数字でわかりやすく伝えること。2点目は、賃金を上げられるかどうかは、社員1人ひとりの頑張りにかかっていることをわかりやすく示すこと。

(公認会計士・税理士 香川晋平)

 

Q2.自社の賃金水準は妥当なのか?

A2.世間相場を気にしていては社員を不幸にする

 中小企業が景気要因で安易に賃上げするのは厳に戒めるべき。従業員の幸福の土台は「安定」にあることを考えると、賃上げで経営が不安定になったり雇用の安定が脅かされてはいけない。また、生活の安定のためには好況時の賃上げより不況期にも定期昇給される安定感が重要。中小企業が賃上げに踏み切って良いのは、自助努力で業績が回復して安定した収益拡大が見込める場合に限る。

(公認会計士 永津洋之)

 

Q3.「なぜ私の賃金があの人より安い」と不満が出た

A3.給与と賞与、昇格の基準を区別する

 人事評価により賃金額を決定していたが、人事評価に対し不満が多かったため、4年前に人事評価制度を刷新した。不満の原因は、人事評価の評価基準(成果・能力・人格)が混在して曖昧だったため。新制度では3つの基準を明確に区別し、3種類の評価軸を用意した。具体的には、①業績貢献(成果を数字で測る) ②能力開発(スキルの向上を評価) ③利他貢献と経理理念・ガイドライン評価(人格的な成熟度を見る)

 これにより、以前のような不満はほとんど聞かれない。

HOMES 井上高志社長)

 

Q4.「世界一の技術」の社員に世界一の賃金を払うか

A4.地域に根差し、できる形できっちり払う

  鹿児島県霧島市で、町工場からスタートした会社だが、積極的な設備投資で社員を育て、日本有数の技術を持つ。社長は世界一の仕事をするには世界一の賃金を出すと良いと考えるが、実際には難しい。そこで到達したのが「今出せる賃金を出せるところまでしっかり出す」という考え方。

 社員はほとんどが地元出身者であるため、地域に根差した会社として終身雇用の方針を貫いている。これを踏まえ地域の給料相場が上がるときにはそれに連動してきちんと賃金を引き上げる。

(藤田ワークス 藤田幸二社長)