『継ぐ』難しさ

 大塚家具のお家騒動、第一幕は大塚久美子社長に軍配が上がったようです。今回の対立はファミリーで事業を引き継ぐ難しさを改めて浮き彫りにしました。同族企業が抱えるトラブルを乗り越え、力を一つにするにはどうすべきか?事業承継の問題はなぜ起きるのか?事業承継の問題を乗り越えた企業はどのように解決したのかをご紹介します。(参考:TOP LEADER 2015.4号)

 

1.事業承継で問題が起きる五つの理由

 ビジネスという合理的な判断に基づく場に、家族関係という理屈では割り切れない感情が含まれる

 家族間の問題であるがゆえ、関係がこじれると第三者が仲裁に入りにくい

 先代には自ら生み出した戦略による成功体験がある一方、後継者には時代の変化や競合対策としてのビジネスモデルがあり、世代間の考え方のギャップが埋まらない

 社内に兄弟など同世代の家族が複数いると、勢力争いになりやすい

 株の所有と経営の承継とのバランスに影響するため、株式の承継のタイミングが難しい

 

2.事業承継を乗り越えた後継者が語る「先代を口説くコツ」

 経営理念を共通言語に議論する

~ハンズマン 大薗誠司社長(宮崎県都城市/ホームセンター)

先代である父と意見が衝突することは幾度かあった。その際、重視したのは「父の立場でものを考えること」。父が掲げた経営理念は自分も共感していたので、それに沿って現場のニーズを代弁する立場で説得した。 

 「暗黙の契約関係」に落とし込む

  ~イシダ イシダ隆英社長(京都府京都市/はかりメーカー)

老舗企業を率いる先代の父に敬意がある。二人で話し合うときは、「暗黙の了解」があり、父が課す一定の条件を受け入れる代わりに私の意見も聞き入れてもらうというもの。いたずらに感情をぶつけ合うのではなく、落としどころを見極めた上で合意するという「暗黙の契約関係」をわきまえていた。

 自分の課題を明確にする

 ~象印マホービン 市川典男社長(大阪府大阪市/家電・リビング製品)

先代である叔父が代表権を放棄しながらも取締役会長として社内に残っていた時期、トップが二人いるような状況で混乱が生じる場面があった。この状況を先代から問い質された際、即答は避けて1週間の猶予をもらい手紙を書いた。ポイントは三点で、「組織人事の問題」「自分の至らなさ」「自分の頭で考えていながら先代に届いていないこと」。冷静に考えを伝えることが出来、先代に思いが伝わると同時に自分の考えを整理することができた。