中小企業M&A~「熱い信頼」と「冷静な算盤」が成功の鍵

 2012年以降になると、「団塊の世代」が65才に達して一斉に退職時期を迎えます。経営者以外の元社員が完全に引退して悠々自適の生活を始めると、同世代である経営者も一線を退こうと考える人が増えると考えられています。そうだとすると、後継者のいない企業が考えるのがM&Aによる売却です。

 今回は、「2012年問題」で中小企業のM&Aが活性化するとの予測から、M&Aを成功させる為のポイントを解説した『日経トップリーダー 2011.11号』の記事をご紹介します。


1. まず、M&Aが何をもたらすかの把握が必要

【売手側】

メリット 後継者不在でも事業を継続できる
売却利益を得られて、重圧から解放される
デメリット 負のイメージを持たれることがある

【買手側】

メリット 新規事業よりも成果を早く得られる
有形・無形の資産を入手できる
デメリット 経営の一貫性を保てないことがある

 

2. 実現までの流れと中小企業が「気をつけること」

【1】相手を探す

流れ 仲介会社を活用するケースもあるが、社長の人脈によるパートナー探しも多い。
注意点 トップ同士の信頼関係を築くことがポイントしっかりとしたコミュニケーションをとり、最終段階まで極秘裏に進めることが重要

【2】条件の決定

流れ 売り手のデューデリジェンス(資産査定)によって会社全体をチェックし、売却額や売買条件を詰める。
注意点 あいまいな点を排除する。「決算書の正確さ」「従業員の雇用継続」などの基本事項のほか、「労働時間を守っているか」など中小企業が見過ごしがちな点も確認する。 あいまいさの排除のため、弁護士や会計士を入れるケースも少なくない。

【3】実施、軌道に乗せる

流れ 契約に基づきM&Aを実施し、軌道に乗せる
注意点 急ぎ過ぎない。経営者が変わったとたんにやり方を大きく変えると、 社員や取引先は戸惑う。まずは円滑な事業の継続を優先すべき。

 

3. 経験者による「M&Aのコツ」

【1】フナソー(東京/港・帯のこぎり製造)×リョーワ(東京/墨田・切断機メーカー)

  • 会計士、弁護士を入れることで納得感を高める
  • 社名はそのまま残すことによって円滑に引き継ぐ
  • 信頼関係を築いてきた前経営者をていねいに処遇

 

【2】ヒューズ・テクノネット(東京/八王子)

  • 優先すべきは「会社の発展」につながるかどうか
  • お互いのメリットを十分に確認してから着手
  • 社員や幹部ら「人」に細心の注意を払う