与信管理に必要な新しい視点

 企業倒産件数は、バブル期並みの低水準が続いています。決して企業の業績が良く景気が上向きだからではありません。政策的に倒産が抑え込まれているからです。その結果経営破綻の性質が変化してきているので、思わぬ被害を受けないよう注意が必要です。

 個人消費の低迷にさらされている小売業やサービス業、円高の余波を受けている製造業を筆頭に企業業績は悪化しています。それにも関わらず倒産件数が少ないのは、政策的な抑え込みの効果です。

200912月の中小企業金融円滑化法が施行され、金融機関は中小企業に対する貸付条件の変更に応じることを迫られました。20133月にこの法律は期限を迎えましたが、このタイミングで金融庁は金融機関に貸付先の倒産件数を報告させるなどの金融モニタリング体制を構築して引き続き倒産を抑制する動きに出ました。その結果金融機関は中小企業向けの貸付条件変更を着実に実行し、実に融資申し込みに対する融資実施の割合は97.3%という高水準です。同時に金融機関は法的整理に直結するような債権保全などのアクションを控え、その代わりに私的整理による事業再生の道を探ることとなりました。

このような倒産件数抑制の環境下、財務データ上では破綻状態の企業がなお数多く生き残っている状況であるため、与信管理が難しくなっています。今後は何に重点をおいて与信管理を行えばよいのか?倒産が懸念される企業の特徴は?次の3パターンに該当する企業は危ないと言えます。

 

1.有力な後継者候補がいない企業

 ⇒金融庁が目下重視する「事業性評価」による選別から漏れる可能性がある

2.経営環境の激変に直撃されやすい企業

 ⇒金融機関は現在、倒産抑制に動いているが、例えば、為替デリバティブで多額の損害を出したような場合、取引先を守り切れないことがある

3.事業再建中でスポンサーを探している企業

 ⇒チャイナマネーなどの外資やベンチャー企業がスポンサーに名乗りを上げるとき、法的整理による債務カットを条件にするケースがある