揺らぐ日本ブランド

 原発事故によるイメージダウンに加え、韓国などの新勢力の台頭で中国における日本ブランドの人気は勢いを失いつつあります。
 東日本大震災の影響で国内消費の低迷が続く中、中国市場における成績不振は憂慮される現象と言えるでしょう。『日経ビジネス 2011.5.16号』(日経BP社)では、’揺らぐ日本ブランド 風評被害に負けない中国攻略法’のタイトルの特集が組まれていますが、今回は本特集で紹介されている7つの視点のうちの一つ「日本製?だから何?」からエッセンスをご紹介します。


  1. 「東洋のベニス」と呼ばれる蘇州は、多くの日本企業が進出してきた親日都市である。当然に日本の食品を扱う店も多かったが、震災後入荷はストップ。在庫商品も、震災後に生産されたものは売れない。


  2. 極端に日本製の商品に拒否反応を示す原因の一つが、正確な情報が届いていないこと。「東日本は人類が住める環境でなくなった」「汚染水で大連や青島の地価が暴落する」「日本政府が中国・海南島への移民計画を進めている」などのデマも多い。

    誤った情報が風評被害を広げ、築き上げた「日本ブランド」を毀損しているのも事実だが、日本離れが進む原因はそれだけではない。


  3. 日本製品の苦戦は数年前から続いている。主な商品の現地での反応は次の通り。

    (1)自動車
     日本車両に対する評価は韓国製と比べ低くなっている。例えば、車体カラーの種類の少なさ、納期の長さなどがその原因。在庫を持たないという日本式の生産方法や車種の絞り込みというノウハウは中国では通用しない。パンフレットも韓国のものと比べ魅力に欠ける。

    (2)家電
     日系メーカーは日本での成功例をそのまま持ち込んでいるだけで、中国人のニーズに合っていない。例えば、大きさ。共働きが多い中国は週末に大量の食料品を買い込む。日本製はそれを収納するだけの容量がない。日本の家は狭く大きな冷蔵庫は不要かもしれないが、中国の富裕層の家は広く、置き場に困ることはない。

     また、デザインにも問題がある。中国の富裕層は機能以上にデザインを重視する。招待客に自慢するためだ。日本製は白かグレーで色も地味なら形も凡庸なので魅力がない。


  4. 震災後、中国人からは日本製品の購入や日本への渡航を敬遠されているが、今後日本にとって中国の重要性は高まるばかり。

     2009年以降日本にとって最大の輸出先となった中国は、震災からの復興においてもカギとなる。今ほど「中国でモノを売る方法」を本気で考えなければならない時はない。