その時、企業はこう動いた。命つなぐサプライチェーン

 東北地方太平洋沖地震の発生を発端に、日本中が未曽有の危機に向き合っています。直接の被害に遭遇しなかった地域でも、経済活動等を通じ影響が出始めているようです。これからが私たち日本人にとっての正念場です。がんばろう日本!

 被災地にある小学校の児童全員が危機一髪で津波の難を逃れたという報道がされていました。この嬉しいニュースは、日頃からの地道な訓練の積み重ねで身に付いた『お・は・し・も』を忠実に守った結果だそうです。具体的には「押さない」「走らない」「しゃべらない」「戻らない」です。実際に災害に直面すると生半可な訓練の知識など消し飛んでしまうものですが、忠実に守る事が出来たのは「殆ど起こる可能性のない大震災に備えた地道な努力」のお陰でしょう。

 では、企業ではどうでしょう?今回の震災発生で自社の混乱を収拾するのに必死である企業が多い中、いち早く被災地の生命線となる「医薬品」「食料品」を送り届けたのが、それぞれ医薬品卸の’東邦ホールディング’とコンビニの’ローソン’です。(日経ビジネス2011.3.28号 特集「その時、企業はこう動いた~命つなぐサプライチェーン」より)


1.東邦ホールディングスの取り組み

 東邦ホールディングスでは平時から震災やパンデミック(世界的大流行)などの非常事態に備えて独自の仕組みを構築してきた。

 例えば、基幹システムで、メーンシステム・物流システム共に複数の地域でデータを共有しているため、一か所で被害が発生しても直ぐに他地域に受発注データを切り替えられる。これは阪神・淡路大震災での経験から導入された。今回被災地にいち早く商品を提供できたのはこのシステムによる。

 また、地下鉄サリン事件で一度に大量の薬品が必要になった経験から都心で6~7日分、地方で12~15日分のストックを備えることとした。こちらも今回の活動に結びついた。

2.ローソンの取り組み

 ローソンでは地震発生5分後に緊急対策本部が立ちあがった。 ところが、通信状態が悪く、固定電話・専用線・携帯電話・衛星電話・各店舗へのオンライン全てが不通だった。そこで、トラック4台に原付自転車や緊急物資を載せて乗用車1台と現地へ。実際に現地を確認すると被災地913店舗のうち389店舗は休業を余儀なくされるが、残りは営業可能とわかった。

 問題は商品の供給。関東以西での製造では距離があって鮮度を保てない。緊急的に利用した空輸も常用はできない。そこで、現地での生産再開を決めたが、食材と燃料の壁があった。 食材なら日持ちするので関東以西からの調達も可能。燃料はガソリンスタンドを併設するオーナーから提供があった。こうして、被災地でいち早く店舗を再開できた。

 コンビニにとって災害時における課題は2つ。1つは自社事業の復旧であり、1つは被災地への救援物資の提供。ローソン新浪社長は地震発生直後からこの二本柱を念頭に事業復旧を手がけた。