「ユニクロ症候群」

 日本経済は長らく沈滞しているものの、ユニクロは快進撃を続け独り勝ち状態です。ユニクロの商品が売れるという状況に危機感を感じ解説しているのが『ユニクロ症候群~退化する消費文化』(小島健輔小島ファッションマーケティング代表著 東洋経済新報社発行)です。今回は、著者の小島氏が『日経ビジネス 2010.9.13号』で紹介する本書の要約をお届けします。


1. 消費の退化

 今の消費者は、夢や理想が無く個性やバラエティーに富んだ服でなくみんなと同じで背伸びしない服を選ぶ。これが「消費の退化」だ。そのような市場の変化と機能を前面に出した服を提案するユニクロの商品がマッチした。

2. 新興国で受け入れられるか?

 「消費の退化」著しい日本で受け入れられるユニクロのビジネスモデルはそのまま中国などの新興国に受け入れられるか?それは難しい。成長著しい国や地域では、ファッションでも理想を追いかけたくなる。より華麗で夢を描ける商品を買いたくなる。かつての日本と同じだ。

3. デジタル文化の影響も

 消費の退化には、デジタル文化の普及も影響している。圧縮された小さな画像データを見るだけで商品を購入することに躊躇しない若者は、リアルを知らず圧縮されたもので満足してしまうという感性を持っているが、それには危機感を覚える。

4. 感性が委縮すると

 小手先の工夫が上手な日本企業は、小技を用いてマイナーチェンジに頼ってきた。しかし、米アップルや韓国サムソン電子のように大胆なデザインやコンセプトの新製品を作り出すことが出来ない。これも消費が退化して感性が委縮しているから。モノが売れないと嘆くより、まずは自らの感性を磨く必要がある。