「官製景気」に息切れの懸念

 この不況下にあっても、好調な分野があります。『自動車』『家電』『住宅』の各業界ではエコカー補助金やエコポイントなど政府の打ち立てた景気回復策の影響で、にわかに活気づきました。

 ただこの現象も制度打ち切りが決まるなどで、終息の兆しも見えてきました。今回は’日経ビジネス2010.8.9-16号’(日経BP社)より、’「官製景気」に息切れの懸念’をご紹介します。


■ 自動車編 – エコカー補助金修了 販売3割減を覚悟

 国内自動車販売を下支えする目的で導入された「エコカー減税補助金」が今年9月末で終了する。当初1年の予定が1年半に延長さている。この反動で販売数は3割程度ダウンすると予測されている。そうすると赤字転落も免れない。

 今後、トヨタはメーカーが身銭を切って「自腹補助金」を用意する予定。政府補助金より額は少ないが、値引の原資を用意することで反動減のショックを和らげようという考え。  加えて、円高傾向が続き各社の収益に悪影響を及ぼしている状況。補助金の終了を控えて各社の底力が試されている。

■ 家電編 – 「国内需要3分の1」海外に活路探る

 家電業界では、2009年度の薄型テレビの国内出荷台数が1588万台で、前年度比57%増と好調だった。背景には二つの官製要因があり、一つは「地上デジタル放送への完全移行」で、一つは「エコポイント制度による補助金」の存在だ。予定では今年年末にエコポイント制度は終了するが、来年7月の地デジ完全移行に向けて新型テレビの駆け込み需要が高まると予想している。

 問題はその後で、国内の需要は従来の3分の1程度に落ち込むと予想されている。そこで各社は海外に活路を見出す計画で、アジア諸国での販売拠点強化などを予定している。

■ 住宅編 – 新築、改築に効果、早くも制度延長要請

 リーマンショック以降低迷が続いた住宅販売だが、6月には新設住宅着工戸数が前年同月比0.6%増など底入れの兆しが見えている。

 その後押し材料の一つが「住宅版エコポイント」だが、特に需要刺激効果が特に大きいのがリフォーム業界とのこと。例えば、既存の窓の内側に「内窓」を付けると断熱性能や遮音性能が高まるが、この工事がエコポイントの対象となり、販売数は好調に推移している。新築工事の分野でも販売実績は好調で、エコポイントの対象となる太陽光発電を備える住居の建設が多い。

 加えて、「住宅供給支援機構の住宅ローン」「過去最大規模の住宅ローン減税」「住宅取得資金を贈与する場合の贈与税の非課税枠の拡大」の影響も大きい。景況感の改善が不十分なまま政府の支援策が切れる事を恐れ、メーカーは政府に対しエコポイント期限延期を働きかけているとのこと。