社長の器 ~ 会社が生きるも死ぬも、あなた次第

 人口減少や中国の台頭で企業の経営環境が激変して、企業は過去の延長で生き残れなくなっています。そこで社長は「おれは、社長の器ではないのでは?」と自問することになります。事業構造や経営手法を抜本的に見直すとき、経営者に求められる役割が従来の比でなくなっている現在にあって、『社長の器』とは何か?求められる『資質』は何か?
 今回は’日経TOP LEADER 2010.8号’(日経BP社)の特集「社長の器」で、3人の社長が勧める「社長の器の広げ方」のエッセンスをご紹介します。


1. 小松ばね工業社長 小松節子 ~ 同じ経営セミナーに何十回と通う

  • 専業主婦だった小松社長が、父の急逝によって「座っているだけでいい」と担がれて社長に就任。実務にタッチせず、暇で参加した経営セミナーも身に入らなかった。
     そのうち経営コンサルタント一倉定氏に出合い、同氏死去までの15年間毎月セミナーに通った。環境や自分が変わるため、同じ話でも聞くたびに新しい発見がある。

  • 習った通りに実践しようとしても反発されるばかり。それを相談すると一倉氏には「それが出来ないなら辞めてしまえ!」と言われる。これで目が覚めた。社員と違い逃げられない自分は会社を守るのが義務だと覚悟が決まった。


 

2. コーセル会長 飴久晴 ~ 持ち株は3割、己の傲慢を抑える

  • 会社の成長に伴い、社長の自信が傲慢に変わり、会社を潰してしまう…これが最も多い破滅のパターン。ただ、頭で理解しても自分がそれを貫けるかは心もとない。どうすればおごりを防げるかと考え、飴会長が実践したのが「自分の持ち株率を抑えること。社長時代の持株割合は30%。副社長が21%なので、二人合わせると過半数持つので平時の経営権は確保できるが、暴走は出来ない仕組み。副社長とほかの株主(他の役員や社員、取引先)を合せると2/3以上を持てるので社長解任も可能となる。

  • 創業コーナーでありながら家族でもない株主に自分の解任権を与えるという選択は容易に出来るものでない。「会社は自分のものと思っていない。私が追い出されても会社が残るならそのほうがいい」というのが飴会長考え方。過去に遭遇した経営危機でも、会社の存続を一番に考えることでくぐり抜けられた。

 

3. マロニー社長 河内幸枝 ~ 分からないことは分からないと言う

  • どんなに有能な経営者でも、個人の力量には限界がある。それを超えるには社員や顧客、取引先、経営者仲間など自分を取り巻くあらゆる人に学び、知恵を吸収し血肉としなければならない。・・・これを実践しているのが河内社長。
     仕事の経験もない専業主婦から後継社長に就任したが、新施策を実行して売り上げを大きく伸ばした。

  • 成功のカギの一つは、数字に強くなったこと。何年分もの月次決算資料を常に持ち歩いて眺めた。そのうち数字の意味や相関関係がつかめるようになった。もう一つが、余計なプライドにとらわれず、誰からも学ぶ姿勢を貫いてきたこと。分からないことがあれば社員をつかまえ質問攻めにした。そして、先輩の女性経営者を訪ね、問題克服の経験談を聞き経営の基本姿勢を学んだ。その結果、自分の限界にとらわれなくなった