常識にとらわれないマーケティング

 人口減により国内市場が縮小化するなか、消費者の嗜好、消費行動はますます多様化しています。しかし、こうした厳しい環境のなかでも好調な企業は存在します。 日経ビジネス2010.6.7号(日経BP社)は、こうした企業の常識に捉われないマーケティング手法を紹介しています。


1.パナソニック電工 ~ 家電をビューティーラウンジで紹介

  • 平均単価が1万~1万6千円の美容機能を持つヘアドライヤー「ナノケア」。他の製品と比べると圧倒的に高価であるが、前期比20%増の50万台を販売した。
    その秘密は池袋駅西口の地下街にあるビューティーラウンジ「クリュスタ」。ドライヤーを含めた家電商品を貸し出し、実際に使ってもらうことで商品価値を知ってもらう。家電は量販店という常識に反するマーケティング手法である。利用者の約15%が実際に商品を購入しているという。

2.東京海上日動 ~ ドコモを保険代理店に

  • ゴルフ場に着くとゴルファー保険のメールが、国際便発着空港なら海外旅行保険のメールが届く。
    東京海上日動火災とNTTドコモが組み、ドコモの「オートGSP」を利用して位置情報にマッチした保険を案内するという今までにない販促手法。自分の行動に直結し、かつ低価格設定なため即断即決の契約が期待できる。開始後1カ月余りだが、予想以上のペースで契約獲得できている保険商品もある。
    既存代理店との顧客の奪い合いが生じることもなく、潜在顧客を掘り起こせている。

3.ギルト・グループ ~ 数々の制約が購買意欲を刺激

  • 招待制を採り、既存会員から招待されるか、申請して招待状を受け取らなければ商品すら見られないショッピングサイト。検索エンジンでもヒットしない。また、買い物かごに商品を留めておけるのは10分だけ。
    露出度と利便性を追求する従来の電子商取引の常識に反する販売モデルにもかかわらず、日本の会員のリピート率は50%にのぼる。
    実は、この形態はメーカー、消費者、サイト運営者の3者の利害を一致させている。
    メーカーにとっては、相手と時間が限られているため、安売りによるブランドイメージの極端な低下が避けられる。こうした利点があるため、運営者はメーカーから格安で商品供給を受けられる。そして消費者は高級ブランド品を手ごろな値段で購入できるというわけだ。

4.ユニクロ ~ ニッポンを活用

  • 海外の店舗において、「高い技術力と品質」という欧米人が日本に抱くイメージを利用し、日本の技術を前面に打ち出した商品販売を行う。
    商品タグには素材や機能の詳しい説明を記載。設計図のようなものまである。HPではベルトコンベアーの上を商品が流れてくるという工業製品のような映像を流している。
    店のロゴはニッポン流にカタカナで「ユニクロ」とし、商品ディスプレイ、接客も日本流に。
    従来の、「マーケティング先進国である欧米勢を手本とすべき」「海外展開する際は現地に合わせなければならない」といった常識に反する手法だが、現地の消費者に評価され、受け入れられている。