裁判官の人情お言葉集

2007年5月1日更新のトピックスで『裁判官の爆笑お言葉集』をご紹介しました。この続編として出版されたのが『裁判官の人情お言葉集』です。感情を表わさず沈着冷静に判決を言い渡すというイメージの裁判官ですが、時には喜怒哀楽を見せることだってあります。

 凄惨な事故が続くにも関わらず飲酒運転が後を絶たず、大きな社会問題に発展しています。何の落ち度もない市民が飲酒運転に巻き込まれて命を落とすといった悲劇が繰り返されることの無いよう、犯人を厳罰に処してもらいたいと考えるのは私だけではないと思います。

 今回は、『裁判官の人情お言葉集』から、お酒が原因で事故を引き起こした犯人に裁判官が投げかけた’心のこもった’お言葉をご紹介します。


  1. 危険運転致傷と道路交通法違反(ひき逃げ)の罪に問われた被告人に対して、執行猶予付きの有罪判決を言い渡し
    話していると、しらふ状態のあなたは、いい人だとわかる。
    後悔していることでしょう。

    そんなあなたでも、こんな事件を起こしてしまう。
    飲酒運転はいかんということ、わかりますね。

    (徳島地裁 杉村鎮右裁判官 2006.10.19説諭)

  2. 業務上過失致死傷と道路交通法違反(酒気帯び運転)の罪に問われた被告人に対して、懲役4年6ヵ月を言いわたして
    いつか社会復帰すると、楽しいこともあると思います。

    ただ、亡くなったふたりはもう、そのような思いを味わうことができないということを考えてください。

    (静岡地裁浜松支部 志田洋裁判官56歳 2006.4.16説諭)

  3. 酔っ払い同士のケンカが高じて、殺人未遂の 罪に問われた被告人に対して、事件当時に心神喪失状態あったと認定し、責任能力がなかったことを理由に無罪判決を言いわたして
    まことにわが日本は、酒を嗜む人のためには天国である。

    現代文明諸国中、酒を飲みすぎ自ら招いて弁識能力を失い、他人を殺傷した犯人を法律を以てこれ程厚く保護している国は稀であろう。

    (京都地裁 小田春雄裁判長 1956.7.5判決理由)

  4. 業務上過失致死傷と道路交通法違反(酒酔い運転)の罪に問われた被告人に対して、懲役4年を言いわたした一審判決を支持しての言及
    この種の事案の量刑の実際をみても、本件における原審の量刑が軽すぎるということのできる運用状況ではない。

    飲酒運転などによる死傷事故に関する罪の新設や法定刑の引き上げなどの立法的な手当てをすることが本来のあり方である。

    (東京高裁 仁田陸郎裁判長58歳 2001.1.12判決理由)

  5. 危険運転致死傷と道路交通法違反(ひき逃げ)の罪に問われた被告人につき、検察側の懲役25年の求刑をしりぞけ、危険運転致死傷の点を業務上過失致死傷へ下方修正(訴因変更)したうえで、懲役7年6ヵ月の判決を言い渡して
    3児はいずれも両親から最大限の愛情を注がれ、宝物のように育てられて幸せで楽しい日々を送っていただけでなく正にこれから夢や希望に満ち溢れた人生を迎えようとしていた矢先、生涯における多くの喜びや楽しみを存分に味わうこともできないまま、理不尽にもわずか4歳11ヵ月、3歳3ヵ月、及び1歳3ヵ月という短い一生を終えなければならなかったものであって、誠にあわれと言うほかはない。

    また、生き残った夫妻が本件事故によって味わった驚愕、恐怖、苦痛は計り知れず、本件事故直後に3児の命を救うべく海中で必死の救助活動に当たる中で夫妻が体験にした不条理で残酷な極限的状況には想像を絶するものがある。

    (福岡地裁 川口宰護裁判長55歳 2008.1.8判決理由)