給料問題解決マニュアル

 景気低迷を乗り切るためにも中小企業は社員全員の力を引き出すことが必要です。「給料格差」「名ばかり管理職」など、給料をめぐる問題が噴出している今、社員が仕事に燃えることができるような給与制度が求められています。今回は『日経ベンチャー 2008年10月号』(日経BP社)の特集”ダメ社員もやる気にした社長が教える 最新版 給料問題解決マニュアル”から、「経営者が直面する給料の悩みにそれを乗り越えた社長たちがアドバイスする ~ 給料の困り事、すべて解決します!」をご紹介します。


Q.「こんな安い給料では結婚もできない」と社員が愚痴っている

A.給与制度の「見える化」

不安なのは「金額」よりも「道筋」給料の上がり方を明確に示す

【回答者】:鈴木秀美
 (システムサーバー社長/システム開発/社員数68人/売上高7億2000万円)

  • 給料の金額水準が他社に劣っていないにも関わらず退職者が続出する経験をした。

    社員が求めていたのは「今期の君の月給は25万円だけど、来期にもうひとつ新しいプログラム言語を覚えて、また周囲にも指導できるようになれば評価は4になる。そしたらランクが一つ上がって、給料が2万円上がるよ」と、「給料アップの道筋」を知らせると退職騒ぎが収まった。

    手をつけたのは自社の「儲けの構造」の整理から。そこから社員の評価項目を決めてそれが給与に反映するシステムを作った


Q.「時給の高い別の店に移る」と言い出したパートを引き留めたい!

A.パートの意欲向上

大入り袋などで仕事の達成感を高めるといい

【回答者】:遠間淳
 (ファミリーショップ専務/東京都・埼玉県南部でクリーニングチェーン運営/社員20人・パート200人/売上高7億円)

  • パート時給は800~850円と高くないが、市場縮小傾向に加え価格競争の激化で昇給できない。クリーニングのオプションサービスである「お役立ちメニュー」の受注成績により店舗の全パートに大入り袋を支給する制度を導入したら元気が出て預かり商品1点当たりの単価も上がった。


Q.「しがみつき社員」を発奮させるにはどうすればいい?

A.若手社員の才能開花

安易な成果主義はとらず、才能に投資する

【回答者】:松浦元男
 (樹研工業社長/プラスチック製小型精密部品で国内有数/生産性の高い高齢者の給料が高い「年齢序列」制度を採用)

  • 意欲が見られない「しがみつき社員」が生まれる理由は’やる気がない”技術(能力)がない”チャンスがない’の3つだが、’やる気’を高めるのは難しい。成果主義導入でも効果は出ない。根気よく発奮を促し、少しでもやる気を見せたら惜しげなく投資する。それが失敗に終わっても励まし、マイナス評価がないことを教える。大事なのは社員の持つ才能を見つけ、それを手間暇かけて育てること。


Q.「人より2倍稼いだのに賞与が同額とはおかしい」と迫られた!

A.ボーナスの不満解消

そもそも、評価面談時や賞与支給後に文句が出ること自体がおかしい

【回答者】:松本順市(多摩研代表)

  • 賞与がどのように決まるのか、あらかじめ社員にきちんと説明しておくと無用のトラブルが防げる。どんな働き方をすれば賞与がいくら上がるか、具体的な仕組みを決めて社員に説明しておくべき。そして、社長は普段からその評価項目を基に社員の成長をフォローする必要がある。


Q.営業職には、やはり歩合給の要素も組み入れるべきでしょうか?

A.成果主義の見直し

歩合給は「劇薬」でもある。「副作用」には十分に用心する

【回答者】:安藤辰
(安藤嘉助商店社長/住宅リフォーム業/社員14名/売上高5億5000万円)

  • かつて営業職を対象にインセンティブ制度を導入。当初は顕著な成果が表れ、劇的に業績が伸びたが、詳細情報を隠したり儲からない仕事を露骨に嫌がったりと雰囲気が極悪に。安易な成果主義を反省し、客の満足度を評価に組み入れる制度に切り替え。


Q.高給で中途採用した社員が期待したほど働かないんです…

A.中途採用社員の減給

どこかで社員と向き合い、給与制度を見直す必要がある

【回答者】:安松本順市(多摩研代表)

  • 中途採用は採用時、相対で給料を決めることが多いので、応募者は一生懸命自分をアピールする。採用側も高い報酬を提示して人材を確保しようとする。結果、中途採用社員の給料は払い過ぎとなり、その後の昇給が見合されて不満がたまる。望ましいのは、入社後半年程度で能力を再評価し、給料見直しを実施するということを採用時に伝えておくこと。


Q.部下から評判が良くない古参社員をどう処遇すればいいでしょうか

A.古参社員の評価透明化

どう働いてほしいかを整理すれば、情に流されずに評価できる

【回答者】:宮崎精一
 (関東防災工事社長/消防・電気設備の工事及び保守事業/社員20名/売上高3億600万円)

  • 管理職に求められるのはリーダーシップや仕事の処理能力に加えて人の上に立つにふさわしい言動。評価項目において管理職に求められる基準に達さなければ古参社員と言えども厳しく対応するべきで、改善が見られないなら退職もやむなし


Q.面談で確認した年間目標を社員が忘れてしまうんです…

A.目標の意識付け

毎日、社員にセルフチェックさせる仕組みがあると効果的

【回答者】:北修
 (シューコーポレーション社長/TSUTAYAのFC・食品スーパー経営/社員25名/売上高11億円)

  • 評価制度は日々の業務では忘れがち。そこで「成長日報」を作成し、社員が毎日記入して「セルフチェック」も行う。この中のチェック項目である「売場管理」の項目が特に重要で、社員に意識付けをすることで大きな成果が得られた


Q.「どうして社長の給料だけがそんなに高いのか」と詰め寄られた!

A.社長と社員の給与格差

「社長が一番損している」くらいがちょうどいい

【回答者】:渡邉美樹
 (ワタミ社長/「居酒屋 和民」の経営の他、介護・農業のグループ会社運営/社員3568名/東証一部上場)

  • 社長の給料を決める基準は「オレが一番損している」と思う金額にすること。この金額だと社員も「そんなものだろうな」と思い、反発もない。経営者は「オレは大損している。それでもいいんだ。オレは会社経営で生きがいという報酬をもらっている。」と思い給料を低く抑えるべき。ところが、社長の中には経費をバンバン落としているような人もいる。これでは社員に不公平感を持たせる。そこで、領収書をすべてオープンにし、しかも交際費はゼロとしている。