やる気を高める脳活用法

 やらないといけないことは分かっている、しかし、どうしてもやる気が出ない。このような状況に苦しんでいる人は多いのではないでしょうか。 今回は、脳科学者・茂木健一郎氏がプロフェッショナルたちの仕事のやり方や日常の過ごし方を脳科学の視点から読み解き、すぐに始められる「脳活用法」としてまとめた「プロフェッショナルたちの脳活用法」の第3章「やる気を高める~プロに学ぶモチベーションアップ法」から、やる気を高める方法をいくつかご紹介したいと思います。


♦ ミラーニューロン

「明確な目標がない」と感じているのであれば、「あこがれの人を持つ」ことがおすすめ。脳の前頭葉には、相手の動作を見たとき、自分がその動作をしたときと同じように反応する「ミラーニューロン」という神経細胞がある。この働きにより、相手のよき振る舞いが自分の中にすんなりと取り込まれ、自分でも気付かないうちに相手と同じように振舞うようになり、ひいては能力アップにつながる。

♦ 報酬

目標はあっても、結果が出ないためモチベーションを維持できないという場合、小さな成功体験が必要。小さな成功でも「クリアできた」ことによって脳内にドーパミンが放出される。これによって脳は「快感」という喜びを得る。こうして苦しみを乗り越えれば快感が待っているという図式が脳に刻み込まれれば、逆境のなかでもやる気を出すことができるようになる。

♦ 主体性

人間の脳がやる気を引き起こすための環境として、「自由であること」は重要である。同じ仕事内容であっても、強制されてやる場合と、自分から進んでやる場合では脳の働き方が天と地ほどもちがってくる。主体性とは、脳科学的には「前頭前野を中心とする神経ネットワークがつくる’私’が、自分の行動を選択して、人生の結果を左右できる」という認識のことである。この感覚を持っていないと、人間は行動や結果から「学ぶ」という回路が発動しなくなり、無気力になってしまうことさえある。

♦ セキュアベース

「セキュアベース」、家族、パートナーや価値観といった心のよりどころを持っていることは、人間のやる気と深く関わっている。人間の脳は「確実なこと」と「不確実なこと」のバランスを常に取っている。「確実なことと同じ範囲内で脳は様々な探究活動をとることができる。逆に言えば、確実なことがない状態では不確実なことも受け入れられなくなるため、引っ込み思案になってしまったり、かたくなになったりしてしまう。セキュアベースの存在により、脳の活動は活発になる。

 

<参考文献>
NHK出版生活人新書 茂木健一郎・NHK「プロフェッショナル」製作班編著
「プロフェッショナルたちの脳活用法」 2009年