「鈍感力」

 渡辺淳一著『鈍感力』(集英社)が、ロングセラーとなっています。’鈍感’というとあまり良いイメージを持たれませんが、著者は人生におけるある種の’鈍感力’は人生を愛と成功へ導くキーポイントであると書いています。 今回は、本著各章からタイトル及び要約をご紹介します。


其の壱 ある才能の喪失

それぞれの世界で、それなりの成功をおさめた人々は、才能はもちろん、その底に、必ずいい意味での鈍感力を秘めているものです。 鈍感、それはまさしく本来の才能を大きく育み、花咲かせる、最大の力です。

其の二 叱られ続けた名医

健康であるためにもっとも大切なことは、いつも全身の血がさらさらと流れることです。 そのためには、あまりくよくよせず、他人に嫌なことをいわれても、すぐに忘れる。このいい意味での鈍さが、血の流れをスムースに保つ要因になるのです。

其の三 血をさらさらと流すために

われわれの血管は自律神経によってコントロールされています。いい意味での鈍感力をもった人の自律神経は、異様な刺戟に見舞われることもなくいつも血管を開いて、さらさらと全身に血を流すように働いているのです。

其の四 五感の鈍さ

人間の五感など、様々な感覚器官において、鋭すぎることはマイナスです。鋭い人より鈍い人のほうが 器官を消耗することもなく、より暢んびりとおおらかに、長生きできるのです。

其の五 眠れる大人

よく眠り、すっきりと起きられる。 この睡眠力こそ、人間の基本的な能力そのものです。 睡眠力なくして、人間が健康であり、人を愛し、仕事に専念することはできません。 よく眠れること、これもまた、まぎれもなく才能なのです。

其の六 図に乗る性格

才能のある人のまわりには、必ず褒める人がいて、次にその本人が、その褒め言葉に簡単にのる、この「図にのる、調子のよさ」はいわゆる、はしたないことではなく、その人を大きく、未来に向かって羽ばたかせる原動力となるのです。

其の七 鈍い腸をもった男

集団食中毒で回りの人がバタバタと倒れるなか、一人だけ、下痢もしなかったA君。多少の雑菌には反応しない鈍くて強い腸をもっていたA君は明らかに勝者です。環境衛生にあまり神経質になるより、抵抗力をもった、強くて鈍い体ほど素敵なものはありません。

其の八 愛の女神を射とめるために

恋愛においても、まさに欠かせないのが鈍感力です。男が女を口説く時、鈍感であることは有力な武器となります。誠実さに鈍感力、この二つがあれば、まさに鬼に金棒。愛の女神はこのような、鈍感力なくして、ゲットすることはできません。

其の九 結婚生活を維持するために

よく、結婚の幸せを口にしたり、老後しみじみ「あなたと一緒でよかった」などといいますが、それは長い長い忍耐を経てきた結果の、つぶやきなのです。 そしてその忍耐の裏には、素敵な鈍感力が二人を支え守ってきたことを、忘れるべきではありません。

其の十 ガンに強くなるために

ガンの予防から治療、そして社会復帰したあとまで、すべての点で大切なのは気持ちのもちよう、すなわち鈍感力です。鈍感力に優れていれば、ガンになっても、そう怯えることはありません。いや、それ以上に、そういう人がガンになる確率は各段に低いのです。

其の十一 女性の強さ 其の一

「弱きもの、汝の名は男なり」・・・男はなんと律儀でナイーヴな性なのか。それに比べて女性はなんと包容力があって、曖昧で鈍感な性なのか。 むろん、これは女性が子供を産むという、人類の存続にとって、もっとも重要な仕事をする性であるため創造主が与えられた、天性の力でもあるのです。

其の十二 女性の強さ 其の二

女性は、出血にも、寒さにも、痛みにも強い。かつて出産は、生む母親も産み落とされる子供にとっても、命がけの難事でした。それを乗りこえて、いかに子供を産み人類を永続させていくか。ここで創造主が考えたことは、出産という難事を担う女性を強く、逞しくつくることでした。

其の十三 嫉妬や皮肉に感謝

友人や会社の同僚による嫉妬や中傷、嫌がらせなどはよくあることです。しかし、いやなことをいわれてもぴりぴりせず、どうして相手がそういうことをするのか、暢んびりゆっくり考えて、相手の気持ちを察してやる。 この心の広い鈍さこそ、生きていくうえでの大きな力となっていくのです。

其の十四 恋愛力とは?

相手が好きで、恋愛関係を続けたいと願うのなら、許す度量も必要です。なにごとも潔癖に厳しく問い詰めていったらともに息苦しくなり、二人の間は早々に崩壊してしまう。二人がいつまでも仲良く、愛し合っていくためには、ある程度相手を許して鈍くなる。この鈍感力こそ、恋愛を長続きさせる恋愛力となるのです。

其の十五 会社で行き抜くために

さまざまな人の、さまざまな癖や態度が気になる人もいれば、あまり気にならず、そんなことはどうでもいい、と思う人もいます。このあたりは、人それぞれの感性ですが、一つだけはっきりしていることは、さまざまな不快感をのみ込み、無視して、明るくおおらかに生きる。そんな鈍感力を身につけた人が、集団の中で勝ち残るということです。

其の十六 環境適応能力

いまのような国際化時代、どこの国に行って、どのような自然の下でもさらに現地のどんな食物を食べても元気で生きていける。 こうした環境適応能力ほど、素敵で逞しいものはありません。そしてこの適応能力の原点になるのが鈍感力です。

其の十七 母性愛 この偉大な鈍感力

母親の愛は、鈍感力の最たるものです。自分のお腹を痛めて産んだ子供がやることはすべて愛しくて、許せる。 この許せる気持そのものがまさしく鈍感力を生みだす原点になるのです。