実践!田舎力 ~ 小さくても経済が回る5つの方法

 地方経済の危機感が増大しています。少子高齢化や都市部への集中志向など、不安の種を数え上げると切りがありません。

 地域活性化アドバイザー金丸弘美氏は、著書『実践!田舎力 ~ 小さくても経済が回る5つの方法』(NHK出版新書)で、地域特性を徹底的に調査し、生活者視点に立ち戻り、連携して新しい仕組みをつくりあげたところに経済と雇用が生まれ、誇りと笑顔が戻ると述べています。六次産業化、着地型観光、コンパクトシティ、再製可能エネルギーなど近年注目の戦略を中心に持続可能なまちを作り出す切り口となる5つの項目につき、ポイントとなる点をご紹介します。

 

1.「六次産業化」で付加価値づくり

【六次産業化における販売のポイント】
① 品揃えに配慮し、欠品を出さない
② 地域オリジナル商品に主眼を置き、品質の優れたものを厳選、集約する。
  地域と無関係の商品を置かない
③ 脈絡のない陳列でなく、流れを考えて商品を並べる
④ 注文に確実に対応できる出荷体制を整える
⑤ 料理や暮らしのことをよく知る店長を置く
⑥ スタッフや生産者の教育に力を入れる
⑦ 体験教室など消費者向けの食育プログラムも組みこむ
⑧ POSなど新しい技術を活用して販売戦略を練る

 

2.ノウハウ継承で人材づくり

【成功例:高知のソフト開発のすごさ】
① 県の職員自らが企画から運営まですべてに関わること
② 受講する農業者・県の普及委員・市町村の職員が三位一体となり動くことで、
  連携しチームで歩むことの理解が深まったこと
③ 小さくても成果目標が設定され、動機付けがしっかりなされること
④ 成果の検証とフィードバックが重視されたこと
⑤ テキストづくりとワークショップが取り入れられ、受講者が自分の地域の強みを理解したこと

 

3.食のルーツを探るテキストづくり

【ワークショップの料理指導をする馬場香織さんがポイントとすること】
 家庭料理が基本になっていること
 だれでも覚えれば簡単にできるメニューが提案されていること
③  ひとつの地域食材をメインにしても、組み合わせで何十種類も料理を考えてくれること
④  家庭の調理器具を使うこと
⑤  初心者でもつくれるよう、ていねいにアドバイスしながら教えてくれること

 

4.交流・連携で互いを活かすまちづくり

【未来のまちづくりを行うために地域が明確にすべき方向性】
①  生活者が暮らしやすい環境づくりを最優先に考えること
② 歴史を振り返り地域資源の掘り起こしを行い、それを発信すること。
  さらに他地域と広く交流することで地域資源をさらに高める
③  行政側は、長期にわたる財政シミュレーションをしておくこと
④ 計画の策定と実施にあたっては、役場と住民が方針を共有して連携できるように協議を重ね、
  コンセンサスを十分に取って足並みをそろえておくこと
⑤ 住民主導の際は、責任の所在を明確にし、自由な事業化が行えるよう活動主体の法人化など
  自主財源と自立性を確保する手段を持つこと

 

5.環境政策で未来づくり

【誰にとっても豊かで暮らしやすい持続的な社会をつくる上で不可欠な環境政策のために必要なこと】
①  地域にある人材と知的資源を発掘すること
②  農業、漁業、林業、山、川、生きものなど自然にある環境資源を保持すること
 地域やまちづくりについての理解を深めるために、経済、環境、健康、食、歴史、文化などについて
  誰もが学べる場をつくること
④  地域全体のビジョンをまとめて、まちづくりの方向を明確に示すこと
⑤  地域住民と行政が一体となった協業の仕組みをつくっていくこと
⑥  地域の可能性を信じる気持ちと愛情と誇りを持つこと