税理士報酬をめぐる地裁判決

 相続税の申告について相談があった場合、「①相続税はいくらかかるか」と「②税理士報酬はいくらか」をたずねられることが多いように思います。ただ正直言って、即答は困難です。事実関係を証拠書類に基づき精査しなければ①の答えは出ませんし、その作業を経て②の答えが出るからです。ただ、相談者にとって最大関心事であることは理解できますので、私は②に関して幅をもった回答をすることとしています。

 さて、税理士が相続税の申告をし、報酬として200万円を請求したところ依頼者が「報酬に関し合意は無いし、実際の報酬はもっと低いはず」と支払いを拒否して争った訴訟に判決が出ました。 

 争点は次の二点です。

1.委任契約が結ばれ、報酬として200万円を支払う合意があったか?
2.契約が結ばれていたとしても報酬額に明確な合意がなかった場合に被告らに請求できる相当のほうしゅうはいくらか?

 

それぞれの争点につき次のような判決が出ました。

1.契約の成立は認められるが、報酬額を当事者間で明確に定めた形跡はない。
2.1.により、報酬額は事務処理に関し合理的と考えられる相当額を支払うと解するしかない。その金額は平成14年に廃止された東京税理士会の「税理士報酬規程」に照らすと1,567,500円になり、これは現状の同業務の報酬と比較しても高額とは言えないので合理的で相当な金額と言える。

 

 税理士が業務を受任する際、業務の範囲とともに報酬についても明確な金額を提示することが必要と再確認できた事例でした。