澤田秀雄に学ぶ『突破力』

 エイチ・アイ・エス会長の澤田秀雄氏は、大手航空会社の隙間を縫うことで格安航空チケットの販売で急成長し、80年代後半には大手旅行代理店の仲間入りを果たしました。さらに90年代後半にはホテル業を皮切りに航空業、証券業にも進出しています。そして昨年からは創業以来赤字続きだったハウステンボスの再生に取り組み、短期で黒字化を成し遂げました。

 今回は『日経トップリーダー 2011年5月号』(日経BP社)の特集’なぜピンチをチャンスに変えられるのか 澤田秀雄の突破力’から、「徹底分析 シンプルで明快 澤田流経営 5つの力」をご紹介します。


1. スピード「戦いはスピード、経営スピード」

 意思決定は即断即決が基本。早く決断したら、結果も早く現れる。 たとえ失敗しても、すぐ修正ができる。  そしてその指示は具体的に。「速く仕事しろ」ではなくて、「今までよりも仕事のスピードを2割速くしよう。そうすれば、経費を2割削減したのと同じ効果がある」と具体的に。

2. 任せる力「見せて、教えて、任せる」

 澤田は創業者としてスタートしたためかトップダウン型に見られるが、実はボトムアップ型。 社員に任せ、育成する仕組みと表裏一体。「見せて、教えて、任せる」これが澤田の経営の基本サイクル。

3. 慎重さ「最悪でもつぶれない。だからチャレンジできる」

 新しい事業に挑む時に、澤田が必ず守っている「鉄則」がある。 それは予め「チャレンジが最悪の結果に終わっても、経営の本体にダメージを与えない」という線引きをしておくこと。

 エイチ・アイ・エスグループが長らく、実質上の無借金経営を続けてきたのも、その表れ。 「身の丈に合わない借金をして失敗すれば、会社が傾く可能性も高まる。一方、無借金経営も安定のためが目的ならば会社の活力を奪い衰退を招く。私の場合はチャレンジのための無借金」

4. 夢を語る力 「世界を基準に考えよう」

 澤田の口癖の一つが「君には夢があるか。夢を持とう」経営者にとっての夢とは、ビジョンや構想力をいう。
 ハウステンボスにおける澤田の「夢」は「観光ビジネス都市」というキーワードで表現される。 世界で観光と教育、医療などを結びつける機運が高まっているようにハウステンボスで観光と様々なビジネスが結びつくようにしたいと考えている。

5. 顧客目線「お客さんは本当にそう感じているのか」

 経営方針や目標、構想は大きく、普段の業務は顧客目線で繊細に気を配るのが、澤田流マネジメントの勘所。
 園内に住み、自転車で巡回しているときの澤田は、完全に顧客の目線に立っている。顧客であれば不満に感じるだろうことに目を光らせる。至らない点が見つかれば改善を指示し、顧客目線の大切さを社員に伝える。