中小企業のための中国進出

 急速な経済成長を遂げ、世界最大級の市場となった中国。「人民元の切り上げ問題」など不確定要素はあるものの”すぐそこにある宝の山”を見逃しては日本の中小企業に未来は見えてこないと言われます。『日経トップリーダー 2010年7月号』(日経BP社)では、現地で奮闘する日本企業の姿と、今から中国で儲けるためのノウハウがご紹介されています。今回はこの特集記事より、’今からでも儲かるサービス分野先行企業5社の「知恵と工夫」をご紹介します。


今からでも儲かるサービス分野  先行企業5社の「知恵と工夫」

課題(1) 地元業者の妨害

 上海MDI【空調設備メンテナンス】~トラブル解決の鍵は有能な中国人幹部の確保
  • 現地にない「日本式サービス」を武器に中国進出を果たした日本企業にまず立ちはだかるのは旧態依然としたサービスしか提供出来ない地元業者の反発。嫌がらせをされ濡れ衣を着せられることも。

  • これを解決してくれるのが、中国人パートナー。 中国で商売するには、現地を任せられる優秀で信頼できる中国人を見つけること。 地元の人間を一人味方に付けておけば、多くのトラブルを回避できる。

課題(2) 人材育成

 ケイアンドエム【美容院】 ~ 「おもてなし」とは何か。5倍の手間で教え込む
  • 中国に進出したサービス・小売分野の企業が頭を抱えるが中国人社員にいかにして「お客様へのおもてなしの心」を植え付けるか。 ケイアンドエムでは日本の五倍の手間をかけてこれを教え込む。 最高のおもてなしで標準的な店舗の5~10倍の料金を設定するが、富裕層顧客で繁盛する。

  • 中国人スタッフの多くは、日本のようなハイレベルのサービスを経験していないので、『おもてなし』の意味が感覚的に理解できない。日本人なら常識的に身につけているようなあいさつ、言葉遣い、表情、身だしなみも教えなければわからない。これらを時間をかけて、特にロールプレーイング形式などを採用してじっくり教える。手間はかかるが、その何倍もの利益を生み出している。

課題(3) 販路開拓

 マックスパワー【食品スーパーの運営】
         ~ 「安心・安全」イメージを出せば中国人は確実に来店する
  • 中国に進出したばかりの日本企業にとっては販路拡大も大きな課題。マックスパワー は、日本企業ならではの「安心・安全」への徹底したこだわりを武器に、顧客を開拓。 但し、価格は近隣の2~5倍。

  • 進出当初は現地で商品を仕入れていたが、品質などにトラブルが頻発し、高品質の商品を持ち込むようになった。当初は知名度の低さから顧客獲得に苦戦していたが、SARSの流行がきっかけとなって現地の顧客を獲得できた。中国の「粉ミルク汚染事件」以来中国人の「国内製品・サービスの安全性」に対する不信はピークにある。 このため、今後も日本企業の「安全・安心」のイメージが販路拡大の切り札となる筈だ。

課題(4) 資材調達

 日比谷花壇【花の販売】 ~ 無理を聞いてくれるのは文革知らずの若い企業家
  • 会社を登記し、店舗を確保しても、資材を調達しなければ商売が始まらない。ここで多くの進出企業は現地サプライヤーの質の低さに悩む。日比谷花壇もこの問題に直面したものの解決により現地での事業を軌道に乗せた。

  • 当初、品質の高い商品を見つけたものの、輸送方法に問題があり商品の劣化という問題が起こった。新たな輸送方法に挑戦しようとする業者が見つからず苦慮していたところ、若い業者が新たな方法を開発し、問題をクリアできた。

  • 資材調達に限らず中国で日系企業の無理を聞いてくれる先進的な取引先を発掘するコツは、経営者が若い企業を狙うこと。文化大革命を直接・間接に経験した年配者が保守的なのに対し、その後市場経済を当たり前のものとして育った若手経営者はフレキシブルな発想と国際的なビジネス感覚を持ち合わせている。

課題(5) 競合他社の模倣

 インターメスティック【眼鏡チェーン運営】
     ~ 仕組みさえ模倣されなければコピー品を気にする必要はない。
  • 中国では魅力的な事業であるほど模倣される可能性が高い。しかし、インターメスティックがオープンしたメガネ店「Zoff」の現場責任者は「店や商品がまねされるのは覚悟の上。それでつぶされるようなら中国で商売などすべきではない」と話す。

  • 中国で繁盛すると、必ず店舗や商品を模倣する競合店が現れる。ただ、コアの強さはまねできないので、不安はない。Zoffの強さはSCM(サプライチェーン・マネジメント)の巧さである。ファッションの流行の先を見ながらハイペースで商品を入れ替え売り場の鮮度を保つのがその内容。中国の消費者も目が肥えつつあり、形だけ真似てみても見透かされ淘汰される。’コピー天国’中国では、模倣を防ぐ努力をするより「まねしたくてもできない仕組み」を作ることが重要。